高市早苗氏は惜敗、カマラ・ハリスは伸び悩む…日本とアメリカで「女性指導者」が誕生しない根深い理由
■勝敗を握る激戦州ではトランプ氏が有利 白人男性のトランプ氏と白人女性のクリントン氏の対決となった2016年の大統領選挙では、白人女性の47%がトランプ氏、同45%がクリントン氏に投票している。 今回、鍵を握る黒人票では、ニューヨーク・タイムズ紙の世論調査(10月12日公表)で、78%がハリス氏を支持していることが明らかになったが、前回、バイデン氏は黒人の90%以上から支持を得ていた。 ハリス氏の場合、「強さ」を求める黒人層に、女性であるがゆえに受けが悪いのだ。オバマ元大統領は、この現状を、「女性が大統領になるという考えに共感できず、別の選択肢に飛びつこうとする態度は受け入れられない」と批判している。 最後にもう1つ、ハリス氏が負けるかもしれないと考える理由を挙げておく。それは、「隠れトランプ」はいても「隠れハリス」はいないという点だ。 2016年の大統領選挙では、筆者を含め多数のメディア人が、「隠れトランプ」の多さを見抜けず、直前まで「クリントン氏優勢」という報道を流し続けた。筆者などは、開票直前のラジオ番組で、「数時間以内に女性大統領が誕生する歴史的な日になりそうです」とまで言い切ってしまった。 お恥ずかしい限りだが、今回も「隠れトランプ」は存在する。そもそも、世論調査や情勢調査などというものは「スープの味見」と同じで、表面的なところをすくって飲むのと変わらない。コップや鍋の底に何が沈殿しているのかまでは可視化できない。 ■「過激な男vs無難な女」どちらが勝つか 底をかき回してみると、「あんな過激な男に投票するなんて言えない」と答えながらトランプ氏に投票する人もいれば、「やっぱり女性っていうのは……」とミソジニーにかられる人もいることがわかるはずだ。 したがって、「トランプ氏がリードしている」という調査結果は信用でき、「数%後れをとっている」という調査結果は、ほぼ拮抗しているとみていいということになる。 「スープの味見」程度では想定外のことも生じる。それは、石丸伸二前安芸高田市長(当時41)が大健闘した東京都知事選挙や、10月27日の衆院選投開票を前に、特に「裏金議員」の苦戦が伝えられる自民党の獲得議席数も同じかもしれない。 ハリス氏vsトランプ氏、決め手を欠く「弱い候補」同士の戦いは、石破首相が誕生した際の「嫌われ者の男と保守派の女」対決と似て、「過激な男と無難な女、どっちがマシか」で決まることになりそうだ。 ---------- 清水 克彦(しみず・かつひこ) 政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 愛媛県今治市生まれ。京都大学大学院法学研究科博士後期課程単位取得満期退学。文化放送入社後、政治・外信記者。米国留学を経てキャスター、報道ワイド番組プロデューサー、大妻女子大学非常勤講師などを歴任。専門分野は現代政治、国際関係論、キャリア教育。著書は『日本有事』、『台湾有事』、『安倍政権の罠』、『ラジオ記者、走る』、『2025年大学入試大改革』ほか多数。 ----------
政治・教育ジャーナリスト/びわこ成蹊スポーツ大学教授 清水 克彦