なぜいま、ここ? 熊本県菊池”リトル台湾”と呼ばれる理由。人気の3軒に行ってきた
熊本県の北部、阿蘇山を望むエリアに広がる菊地市。ここはいま、自然農法が盛んな地域として有名になっている。 台湾料理店「SUMI」のオリジナリティあふれる料理写真はこちらから その様子は、第1回【鎌倉から嫁いでみたら、夫は「米作りの鬼」になっていた! 熊本県菊池の「発酵農園」】、第2回【ストレスのない豚はおいしいに決まってる! 熊本県菊池の「走る豚」はみんな楽しそうだった】でお伝えしました。 菊地は実は、台湾ラバー注目のエリアでもある。 元々、九州と台湾は地理的にも近いが、さらに関係が深くなったのは、台湾の半導体メーカー、台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(通称TSMC)が、2023年、菊地に工場を作ってから。 今では熊本空港から直行便も飛び、2023年に菊池市七城で開かれた台湾フェスは、近隣から7000人の入場者があり大賑わい。七城の人口は5000人というから驚き。 そんな菊池の、台湾ブームを支える人気のお店3軒にお邪魔してきた。
台湾ブームの火付け役「SUMI」
菊池の人なら誰でも知っている、というくらい人気の「SUMI」。生産者さんたちも、よくこちらで集まって情報交換をしているそう。店名はお母様スミコさんの名前から取った。 オーナーの坪井美紀さんは大分生まれ菊池育ち。熊本市内でカフェやライフスタイルショップなどを経営する会社に就職、4店ほどの運営を経験した。 「いつか自分で店をやりたい、とは思っていたんです。調理師免許も持っていましたし。でも菊池は大きな街ではないし、昔栄えていた商店街もシャッターが目立つようになってきていたので、本当にできるのかなという気持ちもありました」 店をやるなら台湾料理、と決めていたそう。現地で教わったり独学で覚えた。 「台湾料理は、中華でも脂っこくなく、やさしい味付けが多い印象です。薬膳や漢方の知恵も入っています。日本統治時代の名残があるので、巻き寿司が台湾風になって売られていたり。醤油ベースの味付けも多く、日本人に合います」 物件を貸してくれる人が現れ、念願の店をオープンしてしばらくしたところで、コロナが直撃。 「厳しかったですが、お弁当や雑貨を販売してしのぎました。台北在住のコーディネーター青木由香さんがやっているブランド、你好我好(ニーハオウォーハオ)の雑貨を販売したり。いまは青木さんプロデュースのお茶の日本代理店もしています。店は料理を出すだけでなく、活動の拠点ですね。菊池市のおすすめスポットをマップにして発行したりもしたんですよ」 その根底にあるのは、ザ・菊池愛だ。 「地元で働けるのは幸せ。親孝行だね、と言われます」と笑う。 お母さまは大人数の会などのときは、手伝いに入ってくれるそう。 こちらのお店はなんといっても、インテリアがかわいい。そしてそれは、決して台湾風なのではない。飾られているオブジェや絵は、坪井さんが好きで集めた日本の作家のものだそう。わざわざ来てもらうのだから、ただのカフェや飲食店にならないよう、気を配っているという。 「料理も、本場台湾というよりは、オリジナルの味に仕上げています。料理のアイデアはいくらでも湧いてきます。何よりも、菊池の食材をおいしく食べてほしい、という思いが強いです」と坪井さん。 確かに純粋な台湾料理というより、坪井さん流の工夫が随所に感じられる、なんともオリジナルな味なのだ。そのおいしさは、青木由香さんも太鼓判。 料理のおいしさはもちろんだが、器の美しさも見事。次から次へと、料理が運ばれ、そのたびに歓声が上がる。 地域とのつながりを大切にしたいという坪井さん。食材はもちろん菊池のもの。スープ麺には、第1回で紹介した「発酵農園」のオリジナル中華麺を使っている。無農薬の小麦粉とモンゴルの天然のかんすいで作られているそう。 基本的に一人でやっているので、いまは完全予約制のコース料理(4000円)のみ。しばらくは新規のお客さんの予約を受け付けるのは難しいそうだが、インスタグラムで情報発信しているのでぜひ見てみてほしい。「SUMI」