なぜいま、ここ? 熊本県菊池”リトル台湾”と呼ばれる理由。人気の3軒に行ってきた
売り切れ続出のパン屋「すずめと穂」
閉店前に売り切れてしまうことも多いという、菊池で人気のパン屋「すずめと穂」は2023年にオープン。直後からそのおいしさで評判に。パンを焼いているのは、台湾人の呉 采樺(ウー サイファ)さん。奥さんの新堀真樹さんは菊池の出身だそう。 「夫と知り合ったのはオーストラリアなんですよ。彼はいつか自分でも店を持ちたいと思いながら、カフェで働いていました。いきなりカフェも大変だから、パン屋さんからやらない?と私が菊池に連れてきちゃったんです。だって、彼の作るパンは本当においしいから」 バゲットなどハード系のパンからフォカッチャ、ベーグル、しょっぱい系、甘い系、サンドイッチ系と、とにかく種類が多い。 「天然酵母を使って、体に負担のかからない消化のよいパンを作っています。白砂糖ではなく、きび砂糖、黒糖、蜂蜜を使い、塩は沖縄の天然塩です」 地産地消を心がけ、小麦粉は九州産、無農薬野菜や果物は地元の農家から直接買っているそう。 「台湾風のパンは、冷やしピーナッツと葱パンくらいですね。これも台湾のテイストを入れたオリジナルで、現地にあるわけではないんですが、おかげさまで人気です」 真樹さんは、主に、サンドイッチの具作りと接客を担当。10時開店だが、ピークは11時で、多くのパンが売り切れそうになってしまうとか。 「いつかはカフェを、と思って、サンドイッチにも力を入れています。急に店を開いたのに、皆さんに仲間に入れていただいて、菊池に来て本当によかったと思っています」 ●すずめと穂 菊池市隈府309-1 営業時間/10:00から17:00 定休日/月火水 どの店も菊池という町に根付き、愛されている。店を始めたいと思っても、普通なら物件探しで苦労しそうだが、どこからか紹介してくれる人が現れ、トントン拍子に話が決まったという。生産者や店同士のネットワークもあり、お互いに情報交換をしたり助け合っているそう。 菊池には温泉もあり、熊本市からはバスで1時間と近い。昔、医院だった洋館を利用したおしゃれなカフェcafe ASANISIMASAや、菊池の食材を使った本格イタリアンのリストランテ ドゥエ マンメ、ピザの名店イルフォルノドーロもある。 新しい店ができて活気づく菊池。わざわざ足を運びたくなる素敵な場所なのだ。
広瀬 桂子(編集者)