日銀のETF買い入れ見直し 市場での存在感は薄れていくのか?
先回り買いの呼び水効果は相当残る?
現時点の情報から示唆される新たな買い入れ基準は、(1)前場下落率1%未満では買い入れを実施しない、(2)2%超の場合は買い入れを実施する、可能性としては(3)1.5%超の場合に500億円(もしくは700億円)程度の買い入れが実施される――といった具合です。この買い入れ基準が定着すると仮定した場合、過去の市場データから判断すると、年間買い入れ額は1兆円にも満たないと考えられます。 株式市場への影響はどうでしょう。それを考える上で踏まえておきたいのは、過去数年にわたって日銀のETF買い入れが海外投資家の売りを吸収してきたという事実です。幸いなことに足もとでは海外投資家が買い越し傾向にあり、株式の需給は悪くありませんが、2018~19年に観察された年間5兆円規模の売り越しが今後起こった場合、日銀の存在感低下を痛感するかもしれません。 もっとも、筆者が思うに日銀のETF買い入れの真価は、後場の切り返しを狙った先回り買いを誘発することにあります。“実弾”としての500億円(最近の1回当たり買い入れ額)もさることながら、呼び水としての役割が大きいように思えます。前場下落率がETF買い入れ基準に合致した際、後場に株価が切り返すことが多々ありました。 だとすれば、今後データが積み重なり買い入れ基準が広く共有されれば、金額的なインパクトこそ従来対比で薄れるものの、呼び水としての効果は相当程度残存し、株式需給の引き締まりに貢献するのではないでしょうか。またETFを売却しない限り、日銀が大株主として君臨する銘柄群の株式需給は構造的に引き締まった状態(≒市場で売りに出される株式数が少ない状態)が維持されると考えられます。日銀が保有株式を手放さない以上、ETF買い入れの効果は残存し、今後も株式市場に貢献する可能性が高いと考えられます。
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