牡蠣による食中毒、原因となる「ノロウイルス」は渡り鳥が由来の可能性 琉球大学らが新発見
琉球大学らの研究グループは、「食用カキにおけるノロウイルス検出は、カモ類・ハクチョウ類の飛来と同調して起きていることを発見した」と発表しました。この内容について中路医師に伺いました。 [この記事は、Medical DOC医療アドバイザーにより医療情報の信憑性について確認後に公開しております]
琉球大学らが発表した研究内容とは?
編集部: 今回、琉球大学らによる研究グループが発表した研究内容について教えてください。 中路先生: 今回紹介するのは琉球大学らの研究グループが実施した研究で、成果は学術雑誌「Journal of Freshwater Ecology」に掲載されています。 研究グループは、カキに蓄積するノロウイルスが沿岸海域の動物によってもたらされるという「ノロウイルス動物由来モデル」を提案しており、このモデルを検討するために宮城県・松島湾の食用カキシーズンに海水を採取し、環境DNA分析をおこないました。その結果、食用カキからノロウイルスが検出されるタイミングと同調して、カモ類、ハクチョウ類、カラスなど6種の鳥類と、イエネコのDNAが同定されました。 分析によると、カモ類、ハクチョウ類の飛来からおよそ4~5週間後、カラスやイエネコの出現からおよそ1週間後に、カキからノロウイルスが検出される傾向があることが判明しました。研究グループは、季節性の渡り鳥がノロウイルスの自然宿主であり、それらが排出した糞尿を介してノロウイルスが沿岸海水に混入し、食用カキの一部に蓄積されるという「ノロウイルス動物由来モデル」が支持されたとしています。また、ノロウイルスとの関与が疑われた鳥類の腸管や糞便から、直接ノロウイルスを検出することを今後の課題としています。 このノロウイルスの自然宿主である動物種を特定することで、その動物の細胞を使用したノロウイルスの増殖が可能になるとも期待されています。研究グループは「ノロウイルスの増殖についての研究は、ワクチンや小分子薬剤の開発などといった治療応用への道を切り拓く可能性がある」と述べています。