牡蠣による食中毒、原因となる「ノロウイルス」は渡り鳥が由来の可能性 琉球大学らが新発見
ノロウイルスとは?
編集部: 琉球大学らによる研究グループが研究対象にしたノロウイルスについて教えてください。 中路先生: ノロウイルスは多くの遺伝子の型があり、培養した細胞などでウイルスを増やすことができないことから、分離・特定が困難なウイルスです。特に食品中に含まれるウイルスを検出することが難しく、食中毒の原因究明や感染経路の特定を困難にしています。 2022年の食中毒発生状況によると、ノロウイルスによる食中毒は食中毒事件全体の6.5%の63件で、総患者数31.7%にあたる2175名となっています。ノロウイルスによる食中毒は年間を通して発生していますが、11月頃から発生件数は増加しはじめ、12月~翌年1月が発生のピークになる傾向があります。現在、このウイルスに効果のある抗ウイルス剤はないため、通常は対症療法がおこなわれます。特に、乳幼児や高齢者は脱水症状を起こしたり、体力を消耗したりしないよう要注意です。脱水症状がひどい場合には、病院で輸液をおこなうなどの治療が必要となります。
今回の研究内容への受け止めは?
編集部: 琉球大学らによる研究グループが発表した研究内容への受け止めを教えてください。 中路先生: 渡り鳥はインフルエンザウイルスにみられるように、ウイルスの運び屋として注目されてきました。今回の研究は、これまで考えられなかった「ノロウイルスと渡り鳥」の関連について注目した大変興味深い研究であると考えられます。さらに、天候の影響(降雨)も考慮されていることや、環境DNA分析という解析手段を用いることで、より信憑性のある結果が得られていることは特筆すべき点でしょう。
編集部まとめ
琉球大学らの研究グループは、「食用カキにおけるノロウイルス検出は、カモ類・ハクチョウ類の飛来と同調して起きていることを発見した」と発表しました。ノロウイルスによる食中毒は毎年発生しているので、今後の研究にも注目が集まりそうです。
【この記事の監修医師】
中路 幸之助 先生(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター) 1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。