LAST ALLIANCE 11年ぶりに音源を発表「リリースまで長かったけど、やっぱりいいでしょ?と言える出来栄えになった」
――「盲目のストレンジャー」はMATSUMURAさんの作詞作曲で、通常ならば自分でリード・ボーカルを取ってもおかしくないのに、ANZAIさんに歌を託した理由は? MATSUMURA ラスアラ休止後、俺がボーカリストとして世に出ようとは1ミリも思ってなくて。ANZAIがいるから、オプション的なボーカルだと自分では思っているから。以前は俺が俺がになっちゃって、ANZAIを食っちゃうようなせめぎ合いもあったけど、ラスアラのメイン・ボーカルはANZAIだから。そこが揺らいだゆえに俺たちは右往左往して、後悔まではいかないけど、反省点が自分なりにあったんですよ。ラスアラはもっとこうしていたら、よかっただろうなと。今回はその二の足は踏みたくなくて。「盲目のストレンジャー」は俺が歌った方が俺のイメージには近づくけど、歌唱力やキー、ラスアラ・ファンに深く刺さるのはANZAIのボーカルだなと。歌い分ける曲でもないし、「まっちゃんが歌えばいいじゃん?」とANZAIからも言われたけど、この曲はANZAIが歌った方がいいなと。そこは確信があったんだよね。いざやってみたら、やっぱりいいなあと。 ――ラスアラ・ファンはツイン・ボーカル体制に魅力を感じている人が多いんじゃないですか。 ANZAI それで僕は困っちゃってるんですよ。10年を経て、僕はツイン・ボーカルでもっとやるべきだと逆に思っていて。まっちゃんが「どうぞ!どうぞ!」と言う必要はないし、歌いたい曲は歌うべきだし、曲によってはまっちゃんが歌った方がいい曲もある。そこがラスアラの個性だった側面もあるわけじゃないですか。それをあえて消す必要はないのかなと。 MATSUMURA まあ、極論の話ね。「シオン」でANZAIが歌ったけど、俺も歌わせろみたいなパートもあるから。ツイン・ボーカルは勝手に出てくるし、消えるわけではないからね。 ANZAI 昔、僕はお客さんのことを全然考えられなかったんですよ。自分で精一杯だった。でも今は考えるようになって、お客さんが何を求めているかと言えば……いろいろと聴きたい要素に中にツイン・ボーカルがあるのかなと思います。 ――バンド内に歌えるメンバーがふたりいるのは強味ですからね。 MATSUMURA いや、歌いますよ。 ANZAI どっちやねん(笑)! MATSUMURA 以前みたいに俺が俺がって、ANZAIを押しのけてまで歌う感覚はないんですよ。ベターな選択をできればいいなと。 ――では、ここから1曲ずつ話を聞ければと。まずは「盲目のストレンジャーズ」から行きましょう。 MATSUMURA サウンド的には一番実験的ですね。だって、HIROSHIが最初に全然出てこないじゃないですか。 HIROSHI ははははは。 MATSUMURA 打ち込みに傾倒した感じだから。ラスアラはメロコアから始まり、ギター2本、ベース、ドラムで成り立つサウンドをやっていたから。で、KEITAが今回の4曲はサウンド・プロデューサーとしてアレンジに深く関わっているんですよ。「盲目のストレンジャー」はラスアラ用に作ったわけではなく、俺とKEITAのユニットみたいな感じで作ったから、KEITAの色が出てますね。でもHIROSHIが叩けばラスアラになるし、ANZAIが歌えばラスアラになるし……それはちょっとビックリしました。 ――メンバーの個性を改めて認識した曲になったと。 MATSUMURA サビまで2分以上かかりますからね(笑)。最近のサブスクに溢れている音楽とは逆行しているから。温めて温めて、HIROSHIのドラムで爆発して、サビでまた来るという、そこはサウンドのテーマでした。 ――いままでにないタイプの曲を作ろうと? MATSUMURA そうですね。いままでこんな構成はなかったから。歌詞は私小説のようなテイストが好きだから、それを押した感じです。1本のムービーのようにストーリー仕立てにしようと。本質はわかりやすいですけどね。焦燥感というか、「ふざけんな、てめえ!」という曲です。 ANZAI 口が悪い(笑)。 ――歌詞には怒りがこもってますよね。 MATSUMURA アングリーな感じですね。 ANZAI 僕も怒りを込めて歌ったよ。怒りはかなり出てると思う。 ――この曲は歌詞、歌声、メロディが際立った1曲ですね。 MATSUMURA そこでしかないですね。アレンジはKEITAに力を借りた曲ではあるけど……。 ――当時から大きくアレンジは変わらず? KEITA 変わってないですね。 MATSUMURA 変わってないけど、この曲でKEITAは覚醒した感じはあるかな。知識、技術、センスが上がってますからね。 KEITA 「盲目のストレンジャー」のアレンジは家で作業して、俺もTRAIBAL CHAIRが解散した後だったから楽しかったですね。リリースまで長かったけど、やっぱりいいでしょ?と言える出来栄えになったから。まっちゃんの歌詞とリンクするアレンジを心がけました。時間はかかったけど、よくできたなと。ストレンジャーがどんどん蝕まれている感じというか、絶望感みたいなものを表現したくて。歌詞の内容から作画をするような感じでアレンジを進めました。