2025年の金融変革「7大予測」とは? NTTデータ イノベーション担当の場合
量子コンピューターと耐量子計算機暗号
量子コンピューターの実現に向けてはここ最近も新たなアップデートが報道されており、2025年も新しい動きは着実に進んでいくものと思われる。 一方で金融に関してのキラーユースケースとなると筆者も長年考え続けてはいるものの、量子コンピューターでなければ解けない問題というのは現状金融領域では見つけられていない認識であり、今後もすぐに見つかると思っていない。 量子コンピューターでも解けるが、既存コンピューターでもそこそこ解ける問題は存在するが、この領域は既に既存コンピューターである程度答えが出せるため量子コンピューターを投入することで劇的に改善するペインポイントはないと考えている。 したがって量子コンピューターのユースケースの議論は引き続き議論が続いていくと思うが、そのヒントになる可能性があるのは、これまで取り扱ってこなかったデータを金融機関が取り込もうとした際に始めて直面する問題がトリガーにならないか?ということである。 そういった意味では事業成長担保権は今まで金融が見てこなかったデータをあつかうことからその可能性を秘めているといえるだろう。また、既存コンピューターとの量子コンピューターを組み合わせてハイブリッドな問題の解き方を前提に考えていくことも必要となるだろう。それぞれ得意な計算を分担することで新しい価値が生み出される可能性がある。 いずれにせよ、繰り返しにはなるが、量子コンピューターのユースケースの議論は継続されていくことになるだろう。一方で先日寄稿(注2)した内容の繰り返しにはなるが、2025年は耐量子計算機暗号の準備を始める元年ということになるだろう。金融庁の「預金取扱金融機関の耐量子計算機暗号への対応に関する検討会」の報告書(注3)を受けて、銀行は準備を進めることになると考えており、また銀行以外の金融機関もその流れにのっていくことになると考えている。 一旦の目標は2030年ということにはなるが、暗号通信にかかることから業界全体でもあり、また金融機関に限らず全産業に影響することになるため、対策が進んでいくことになるだろう。 また、金融庁が先日パブリックコメントの結果(注4)について発表をしたいわゆるサイバーセキュリティガイドライン(案)には量子コンピューターとは別枠でSBOM(Software Bill of Materials)の整備についての記載もあり、この流れとも併せて整備が進んでいくことになることになるだろう。