第二形態へ進化…なぜ渋野日向子はスランプ脱失の兆しを見せたのか…通算6アンダーで今年初のトップ10入り
2アンダーの70で首位と4打差の7位で終えた第1ラウンド後の会見で、渋野は、こんなコメントを残していたのだ。 「もうちょっと飛ぶようになりたい。風とかある中でも、すごく高いボールでグリーンを、ピンを狙っていけるゴルフがしたい。女子は高いボールを打ったり、スピン量が多い選手ってあまり多くいないと思う。でも、米ツアーには(そんな選手が)いるんですよね」 昨秋、2018年のプロテストに合格する前から指導を受けていた青木翔コーチとのコンビを解消した。その後、新しい師匠のような存在となったのが石川遼だった。今年に入ってから石川の助言も受けてスイング改造に着手した。再現性と安定性を最優先し、飛距離は二の次。アップライトだったスイングをフラット気味にし、ワンプレーンを意識した。右腕が肩と水平になる位置がトップのイメージ。そのフォーム改造で飛距離が明らかに落ちた。 「誰が何を言おうと自分が決めたことをやりきりたい」 一方で、その思いは徐々に数字にも表れてきた。 米ツアーでもフェアウエーキープ率は常に上位。6月の「全米女子オープン」の第2ラウンドはフェアウエーを外したのは一度だけ。リンクスでの「全英」でも高いフェアウエーキープ率を誇った。石川と一緒に取り組んだフォーム改造の成果はある。なのに、思うように成績がついてこなかった。「全米」は予選落ち、「全米女子プロ選手権」は40位。飛距離が落ちたことで、グリーンを狙うショットの距離は長くなり、パーオン率は低下。バーディーが取れないという“ジレンマ”に悩むゴルフが続いたのである。 「ようやくマン振りしても曲がらなくなった。ある程度、振っていこうと思っている」 そう話していたのは7月下旬の「楽天スーパーレディース」だった。
スイング改造の第一段階が終わった。飛距離を戻すのが次のステップ。そのための第一歩が、今回の大会であり、ドラコン出場表明だったのかもしれない。 「曲げてもパーを拾ったり、なんかよく分からないとこからバーディーを取る。見ていても、おもしろいゴルフを余裕を持ってやれるようになりたい」 そういうゴルフで観客の心をわしづかみにしていたのが、「全英」を制した2019年だった。飛んで曲がらないドライバーショットを目指す渋野の挑戦。原点回帰ではなく新たな進化。バージョンアップを目指す“新生・シブコ“が、第一形態から第二形態へ進化したのである。 渋野の次戦は、24日からの「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープンゴルフトーナメント」。第二形態に突入した渋野が美酒を味わう日が近づいているのかもしれない。