発想変え偶然の大発見「半導体製造に不可欠の結晶」…大阪大・森勇介教授
97年、結晶を大きくする溶液と一緒に洗濯機のように 攪拌(かくはん)して大きな流れを作ると、割れにくい結晶ができた。詳しい仕組みはわかっていないが、世界の研究者が目指していた実用に堪える結晶が完成した。
その後国内外の企業との研究で、光源から届いた波長1064ナノ・メートルの赤外線レーザーをLBO結晶で532ナノ・メートルのグリーンレーザー(可視光)に変換、さらにCLBO結晶を通してより波長が短い266ナノ・メートルに変換する高出力紫外線レーザーを作ることに成功した。紫外線レーザーは半導体の検査装置に搭載され、世界中に普及した。
半導体などのものづくり産業を川の流れにたとえ、「結晶は最も『川上』に位置する」と強調する。
CLBO結晶から高性能の半導体検査装置が開発され、「川下」では同装置を使って製造されたスマートフォンやスーパーコンピューターなどの製品が広がっている。
「理にかなった型破り」ノーベル賞候補にもなり得る
CLBO結晶の発見だけではない。より性能が高い次世代半導体の材料となる窒化ガリウム(GaN)結晶を高品質化する研究開発にも取り組む。
GaNは青色発光ダイオード(LED)で使う結晶。この発明で14年にノーベル物理学賞を受賞した名古屋大の天野浩教授と07年から共同研究を続ける。次世代半導体は電気自動車などへの利用が期待されるが、GaNを大量生産すると品質低下などの課題があった。
森さんはここでも「結晶は静かな状態で作る」という常識を破り、小さな結晶の「種」を溶液につけるなどして高い品質の結晶を生み出した。
天野さんは「業界の常識にとらわれない『理にかなった型破り』だ。高品質化の手法はノーベル賞候補にもなり得る」と評価する。