映画『画家ボナール ピエールとマルト』:フランス絵画の巨匠が見た景色、愛した女性
画家ボナールが見た光
マケーニュ そういえば、画家の役は初めてでしたが、漫画家を演じたことがあるのを思い出しましたよ。 これは自身がかつて出演した映画『ソルフェリーノの戦い』(13/ジュスティーヌ・トリエ監督)のこと。別れた夫婦が激しくののしり合う物語だ。 マケーニュ 今の世の中、カップルはすぐに別れるし、人間関係がどんどん粗暴になり、誰かを攻撃してばかりいます。でもピエールとマルトの物語には、長い年月を通して2人がどうやって苦難を乗り越えたかが描かれている。そういう相手の存在がいかに大切か、若い時には気付かなかったことが、僕にもやっと理解できるようになったんです。 魅力的な人物たちが織りなす人間模様に加え、それをとらえた絵画的なショットや、舞台となるノルマンディー地方の自然豊かな風景も映画の見どころだ。 マケーニュ この映画が貴重なのは、実際にボナールが生活し、絵を描き、人生のさまざまな経験をした場所で撮られたことです。合成ではない、ピエール・ボナールが見た本物の風景を追体験できると思います。それもマルタンのすぐれた撮影方法のおかげですね(笑)。 プロヴォ 私が求める撮影方法は非常にシンプルです。被写体に正対して撮るということ。まさに絵画のようにね。別にボナールにならって、というわけではありませんでしたが、常に頭の中には、すべての登場人物がカメラに対して正面を向いているイメージがありました。私もカメラの後ろで、正面に立ちます。相手のまなざしを見るのが好きなのです。 取材・文:松本卓也(ニッポンドットコム)
【作品情報】
監督:マルタン・プロヴォ 出演:セシル・ドゥ・フランス、ヴァンサン・マケーニュ、ステイシー・マーティン、アヌーク・グランベール、アンドレ・マルコン 製作年:2023年 製作国:フランス 上映時間:123分 配給:オンリー・ハーツ 後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ シネスイッチ銀座・UPLINK吉祥寺ほか全国公開中