創業家のセブン買収、「2月完了」が絶望的な理由、過去最大規模の大金策、自己資金が足りない!
先述のように9兆円規模のLBOとなれば、通常はエクイティだけでも3兆円程度は求められ、創業家はさらに約2兆円を工面する必要がある。創業家は総合商社の伊藤忠商事にも資金の拠出を要請しているが、伊藤忠も1社で残りを補うのは難しい。 金額の大きさもさることながら、伊藤忠は子会社にファミリーマートを抱える。独占禁止法上の懸念や社内の関係者、加盟店オーナーなどの理解を得るためにも、過半など高いポジションをとる意思はないとみられる。持ち分法投資益を取り込める、エクイティ全体の15~20%程度の負担が妥当な線だろう。
■借り入れにも難路 エクイティが不足する中、残りの買収資金を全額借り入れでまかなえるか、というとそう単純な問題でもない。 たしかに国内銀行の融資体制は手厚い。関係者によるとセブン&アイのメインバンクである三井住友銀行などメガバンク3行が大口信用供与等規制(銀行が一グループの貸出先へ行う信用の供与等の額を制限する規制)を超えない範囲で、1兆円超ずつの融資を検討している。 りそな銀行や三井住友信託銀行も参加を検討している。国内銀行団による融資は総額5兆円程度とみられ、国家プロジェクトの様相を呈している。
が、買収総額の7割を負債で調達しようにも、金額にして6兆円が必要だ。あるメガバンク上級幹部は「邦銀だけでどうにかなる問題ではない」といい、外資系投資銀行(外銀)にも融資への参画を打診していると明かす。バンク・オブ・アメリカやシティバンクの名前が候補に浮上している。 ここでもエクイティ不足が影響してくる。取引の内情をよく知るこの幹部は「外銀を説得するためにはもっとエクイティを積む必要がある」と指摘する。
伊藤家と伊藤忠の出資だけでは買収資金総額に占めるエクイティの比率が低すぎる(=レバレッジが高すぎる)ため、外銀の融資審査基準をクリアできていないようだ。 エクイティとデットの中間的な位置づけである、メザニン(優先株や劣後ローンなど)による調達で、アメリカ投資ファンドから調達する案もあるようだが、一般的には「買収総額の1割程度が限度」(国内外で多くの案件に携わるファイナンシャルアドバイザー)であり、こちらも不足分をすべて補うには至らない。