クロップがパリ・パラリンピック観戦…プロサッカー選手の夢絶たれた20年来の友人を応援「これほど誇らしいことはない」
ユルゲン・クロップ氏が、パリ・パラリンピックで20年来の友人の応援に駆け付けた。フランス『AFP通信』が伝えている。 昨シーズン限りでリバプールの指揮官を退任し、現在は休暇を楽しんでいるクロップ氏。29日にはパリ・パラリンピックのバドミントンの試合会場を訪れ、20年来の友人である同胞ヴォイテク・シス(44)をスタンドから応援した。 ポーランド系ドイツ人のシスは、プロフットボーラーを目指してフォルトゥナ・ケルンでプレーしていた2001年の試合中にルーズボールを競った際に相手GKと激しく交錯。複雑骨折や幾つもの主要血管の損傷によって、左足下部の切断を余儀なくされた。 これでプロフットボーラーの夢は絶たれたが、すぐさまパラアスリートに転向すると、2004年のアテネ・パラリンピックでは100メートル走、200メートル走、走り幅跳びでそれぞれ金メダルを獲得し三冠を達成。その後も、2012年ロンドン大会の走り幅跳びで金メダルを獲得するなど、輝かしい成績を残していた。 2013年には引退を表明し、妻のエレナさんと共にカタマランボートを購入し、世界中を航海する旅を行い、2019年にバドミントン競技への転向を表明。そして、今大会にはバドミントンで参戦したが、男子シングルスでイギリスのダニエル・ベセルに惜しくも敗れた。 なお、クロップ氏とはシスが前述の大ケガからリハビリを行っている期間に当時マインツを指揮していた同氏と知り合い、そこから長らく友情関係を築いてきた。 そして、クロップ氏はリバプール監督時代も含め多くの場面でシスのエピソードをインスピレーションの源として周囲に紹介していたという。 同試合後、シスと共にメディアの取材に応じたクロップ氏は、「私は彼の素晴らしい奥さんであるエレナの隣で観戦した。そして私たちは二人とも涙を流したよ」、「これほど誇らしいことはない。私はスポーツがすべて結果であることを知っているが、彼をコートで見ただけでとても感動してしまって、頭が真っ白になったよ」と友人の健闘を心から称えた。 さらに、ダイビングのインストラクターのライセンスを持つ友人について「ヴォイテクは、私が勇気がなくてできないことを常にやっている。昨日、彼はサメと一緒に泳ぐのがどれほど簡単かを教えてくれたよ」とジョークを交え、シスを含めて多くの人を笑顔にした。 一方、惜しくも勝利を逃したシスは「ユルゲンは私にとって家族だ。今日の厳しい敗戦にもかかわらず、彼が私の傍にいてくれたのは素晴らしかった。私たちにはユルゲンのようにスポットライトを当ててくれる存在が必要なんだ」と感謝を伝えた。 さらに、次の試合でも再び招待するかとの問いに対しては「今日の私のパフォーマンスを考えると、それについて考慮する必要があるね」とクロップ氏同様の気の利いたジョークで場を和ませた。 また、気遣いのドイツ人指揮官は友人を撃破したベセルに対しても「素晴らしいプレーだったよ。ダン」という言葉と共にサムアップのジェスチャーを送り、ベセル本人も「彼が見てくれるとは現実とは思えなかったね」と感激の様子だった。
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