「トランプは神に選ばれし救世主!」「テキサスを独立国家に!」トランプを大統領にしたヤバい奴ら
大統領選は「サタンとの戦い」
福音派はテキサスだけでなく、全米で大きな勢力を誇り、アメリカの成人人口の約4分の1を占めている。そして、今回の選挙では福音派の人々がトランプの強力な支持基盤となった。信者の約8割がトランプに投票したという。 彼らは聖書を歴史的な書物ではなく、「御言葉=神の言葉」だとして信じており、聖書に忠実な信仰生活をおくっている。 「聖書には神が男と女を作ったと書かれています。だから福音派はトランスジェンダーを認めません。同じ理屈で人工中絶にも反対です」(同前) トランプが人工中絶に慎重な立場なのは、こうした支持者のためだ。 福音派の伝道師たちは激戦州を回って宗教イベントを催し、トランプを支援した。その一人がテキサス州在住のランス・ウォルナウ牧師だ。選挙戦をサタン(悪魔)の軍勢との「霊的戦い」と位置づけ、信者たちにこの戦いに従事するよう呼びかけてきた。 「トランプ氏と初めて会ったのは'15年12月30日、トランプタワー26階のボードルームでした。彼は優しく、穏やかでした。そして、自分のようなビジネスマンより、我々のような聖職者のほうが崇高な職業であることを認めました。とても謙虚な印象を受けました」
トランプは神が選んだ「救世主」である
とはいえ、トランプは過去のセクハラ報道や、刑事裁判での有罪評決など、キリスト教の価値観に反する言動が目立つ。それでも、福音派の人々が支持するのはなぜか。 ウォルナウ氏はトランプを聖書に登場するキュロス2世になぞらえる。ユダヤ人を「バビロン捕囚」から解放してエルサレムに帰還させたペルシャ帝国の皇帝だ。 「キュロスは無信仰でしたが、神はそうした人間を用いることもあるのです。確かにトランプ氏は下品な言い回しをします。しかし、そういうスタイルだと理解すれば、トランプ氏が他の政治家が言っていない真実を語っていることがわかります」 トランプは神が選んだ「救世主」である―福音派の信者たちにそれを確信させる出来事も起こった。7月13日のトランプ銃撃事件だ。銃弾は右耳をかすめ、トランプは命拾いした。バージニア州在住の福音派の牧師、レオン・ベンジャミン氏が語る。 「トランプ氏は事件後、『神が自分を救ったのは目的があるからだ』と言いました。彼は自分より大きなものが命を救ったことを理解しています」 トランプは「神の奇跡」を経て、もはや個人崇拝の対象にもなっている。宗教学者のマシュー・テイラー氏が解説する。 「民主主義や多元主義、市民参加などの概念は、人類の歴史において非常に新しく導入されたものです。人類は長きにわたり、王や皇帝、部族の長など強い男に守られて生きてきました。『強い男』に惹かれるのはまさに人間の本性なのです」