ついにヤマトが上期赤字転落「値下げ戦略」で窮地、4期連続減益“負のスパイラル”招いた強気計画
■構造改革に着手 関連して、2021年以降進めてきたネットワークの構造改革について10月に役員の人事異動を行った。 作業コストの改善や拠点間輸送の効率化に向けて、元アマゾンジャパン副社長の鹿妻明弘・専務執行役員を中心にプロジェクトを進めてきた。以前から担当してきた柴崎安利・執行役員に加えて、阿波誠一・専務執行役員と阿部珠樹・常務執行役員も担当する体制に変わった。「(改革が)そうとう実行フェーズに入っており、多くのベース(拠点)の動きを見ていかなければならないこともあり、役員を増やしている」(栗栖副社長)。
ネットワークの構造改革について、ヤマトは前期も、その前の期も「効果が出てきている」と説明してきた。数年間をかけ投資した以上の効果を出していく構えだが、業績は前述のとおり厳しい。より明確な成果が求められるフェーズといえそうだ。 一方、ヤマトは攻めのM&Aも打ち出した。ロジスティクス事業の強化に向けて、3PL(物流業務の一括受託)や不動産事業を展開するナカノ商会を12月に買収する。 ナカノ商会は1988年に設立、アマゾンの物流センター業務や拠点間の輸送を担当し、急成長してきた会社だ。近年のヤマトは倉庫と配送ネットワークを組み合わせた提案で法人顧客の獲得に力を入れている。ナカノ商会からノウハウを獲得し、配送面でのシナジーも狙う。
買収額は469億円。純資産との差額であるのれんは約380億円になる。償却年数は未定だが、ナカノ商会は2023年9月期に46億円の営業利益を計上している。多少なりとも利益貢献はありそうだ。 ■難しい舵取り 鹿妻氏は10月からヤマトのロジスティクス事業を統括する役割となっている。ロジスティクスはヤマトの成長戦略の一つ。鹿妻氏はナカノ商会との連携含め、引き続き重責を担うことになる。 4期連続の営業減益、下方修正となり、利益率も大幅に低下したヤマト。構造改革の途上とはいえ、長尾裕社長を含め経営陣の責任を指摘されかねない事態だ。新規顧客の開拓と採算、改革の成果と投資費用のバランスなど、極めて難しい舵取りが続きそうだ。
田邉 佳介 :東洋経済 記者