【10年ひと昔の新車】「スポーツカーはカッコ良くなきゃ!」を再認識させた、プジョー RCZ
プジョー RCZ(2012年:ニューモデル)
「10年ひと昔」とはよく言うが、およそ10年前のクルマは環境や安全を重視する傾向が強まっていた。そんな時代のニューモデル試乗記を当時の記事と写真で紹介していこう。今回は、プジョー RCZだ。 【写真はこちら】 RCZを走らせてみると、FFであるにもかかわらず自然で安心感のある気持ちの良いハンドリングに感動した。(全9枚)
プジョーのスポーツクーペ、RCZの最大のウリはなんといっても他に類をみないアバンギャルドなスタイリングだろう。2007年のフランクフルト モーターショーで「308RC Z」という、ハッチバックの308をベースにしたコンセプトモデルとしてワールドプレミアされ、その後の東京モーターショーにも出展されたから、ご覧になった読者諸氏も多いだろう。そのスタイリングをほぼそのまま、だが車名は単に「RCZ」となって2010年に発売開始された。 日本仕様は6速MTの左ハンドルと6速ATの右ハンドルが設定されているが、やはりスポーティな走りを積極的に楽しみたいのならMTに限る!というわけでMT仕様を借り出して試乗してみることにした。 独立したトランクを持つ2ドアクーペなのだが、まず2つの球面で構成された印象的なルーフや、AピラーからCピラーをつなぐアルミ製のアーチが独特だ。ルーフラインは、そのままテールへと繋がっているようでハッチバック風に見える。だがよく見るとルーフのラインはリアタイヤ上で流れを変え、その先はリアフェンダーからのラインがそのままリアエンドまで繋がっている。このスタイリング、気に入ったひとはハマるに違いない。 2ドアゆえ比較的大きなドアを開けて乗り込むと、インテリアのデザインと仕上げの良さも好印象だ。クーペスタイルながら全高は1360mmとあまり低くないせいか、意外と着座位置は高く、視界も悪くない。ふり返って見ると、後方視界もけっこう良い。
先入観をくつがえすRCZは、紛れもなくスポーツカーだ
さて、RCZのギアを1速に入れてクラッチをつなぐ。このクラッチのつながるフィーリングがまた良い。とてもスムーズだ。しかもシフトフィールも良いから、運転が楽しくなる。さらに圧巻はエンジンだ。BMWと共同開発された1.6Lのターボエンジンは、スペック上の最高出力は200psだが、それ以上にパワフルに感じる。最大トルクは275Nmとけっこう太く、しかもその発生回転数が1700rpmと低めだ。そのため、低速域からトルクフルで扱いやすく立ち上がり重視の走りに向いている。おまけに3000rpmを超えるとかなりイイ音を奏でてくれる。 とにかくRCZのエンジンは元気で、そのレスポンスでFFとは思えないメリハリのあるハンドリングが味わえる。また、プジョーはダンパーをサプライヤーに任せず自社製造しているほどサスペンションにこだわるメーカー。足の動きは締まりがありながらも、とてもしなやかにストロークする。よって、乗り心地も良いがハンドリングも落ち着き感のあるシャープなものだ。 操舵と駆動を同じフロントタイヤで行うFF車は、コーナリングではフロントタイヤの仕事量が多いために一般的にはスポーツカーには向いていない。だが、RCZを走らせてみると自然で安心感のある気持ちの良いハンドリングに感動した。レイアウト上のハンデなどほとんど感じさせずにドライブを楽しむことができる。総合的な質感は高く、おとなのクーペといった印象だ。 唯一の欠点は、リアシートがかなり狭くヘッドレストも小さいので、おとなが座るのは不可能に近いこと。トランクスペースは321Lもあるから、このスペースをもう少しリアシートに充てて欲しかったとも思ってしまうのだが、スタイリングを考えると無理そうだ。まあ、2シーターと割り切ればラゲッジスペースは広いし、おとな2人での小旅行には十分対応できるだろう。 いずれにしても、Cセグメントのスポーツクーペというプジョー RCZは貴重な存在だ。日本でも海外でも、このクラスのスタイリッシュなスポーツモデルがもっと増えていくことに期待したいものだ。
プジョー RCZ 主要諸元
●全長×全幅×全高:4290×1845×1360mm ●ホイールベース:2610mm ●車両重量:1350kg ●エンジン:直4 DOHCターボ ●総排気量:1598cc ●最高出力:147kW(200ps)/5800rpm ●最大トルク:275Nm(28.0㎏m)/1700rpm ●トランスミッション:6速MT ●駆動方式:横置きFF ●燃料・タンク容量:プレミアム・55L ●JC08モード燃費:13.2km/L ●タイヤサイズ:215/45R17 ●当時の車両価格(税込):423万円
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