【スクープ】東京都心で高齢者の「連れ去り」が起きている!なぜ肺がんの治療さえ受けさせないのか「これは港区による虐待です」
「電話をおつなぎすることはできません」
「港区の指示により、お母さんと電話をおつなぎすることはできません」 なぜ、そんな指示が港区から出ているのか。呆気にとられた裕子さんは、今度は港区に電話した。電話に出た担当部署の職員は「いま、お母様は安全な場所にいますから、あなたは少し離れていてほしい」としか言わない。不信を募らせた裕子さんは「電話で話もできないのはおかしいでしょう?」と食い下がった。すると、職員はこう言ったのだという。 裕子さん、あなたがお母様を虐待しているとわれわれ行政は判断しました。そのため、あなたは「中長期的に会えないんです」と。 虐待? 私が? まったく心当たりがない。その後、裕子さんは何度も説明を求めた。 港区によると、母の薬指に打撲の痕があったという。それが虐待の証拠と見られたらしい。しかし、あの痕は何年も前のオーストラリア旅行でケガをした際のもの。「すねにアザがあった」とも言われたが、それは母がお風呂に入った時に尻餅をついてぶつけてできたものだ。そう説明しても港区の職員は、裕子さんの言い分を聞かない。そして、面会禁止を告げた。何度も「直接、母と話をさせてほしい」と申し出ても、港区の対応は変わらない。 高齢者虐待防止法は、養護者によって高齢者が虐待され、生命や身体に重大な危険が生じている恐れがある場合、高齢者を一時的に施設で保護する権限を市区町村長に与えている。これを「分離保護」という。裕子さん母娘にも適用され、統合失調症を患ったことのある母は精神科病院に入院させられたのだ。
成年後見人の不手際で家族の思い出の品が廃棄
裕子さんをさらに追い詰めたのが、連れ去りから約7カ月後、2023年4月の出来事だ。母に成年後見人がついたのである。 成年後見人は、認知症や精神障害などにより判断能力が不十分になった人に代わり、預貯金などの財産の管理や介護サービスなどを契約できる制度だ。本来は高齢者の財産や人権を守るための制度だが、後見人が家族の意向を無視して不動産を勝手に売却して手数料を得たり、被後見人の高齢者に最小限の生活費を渡さなかったりするなど、トラブルが多発している。 もともと裕子さん親子は福岡県に住んでおり、港区への引越し時には新しい家に入らない家財道具を福岡のトランクルームに預けてきた。トランクルームの契約は裕子さん名義で、代金はいつも母の年金から支払っていた。 そのため、裕子さんはトランクルームの代金の支払いを成年後見人に依頼したところ、裕子さん名義の契約であることを理由に拒否された。支払いが滞ったことで、トランクルームは契約解除に。家財道具だけではなく、父の遺品や裕子さんの成人式の写真など、家族の思い出の品も処分されてしまったという。 そのうえ、さらに信じ難い出来事が降り掛かってきた。港区が徹底して、母娘の面会を拒んだのである。母がどこにいるのか、それもわからない。手段を尽くして、ようやく東京都内の精神科病院に入れられていることを知ると、弁護士を立て、母との面談を求めた。実現したのは、今年10月である。“行政による連れ去り”から、2年もの月日が流れていた。 でも、許可されたのはオンライン面談で、時間もたった20分。裕子さんは言う。 「母の顔は変わり果てていました。母は『ご飯がおいしくない。毎日、天井を見て、涙をこらえている。誰がこんなことをしてるんだろうね』と」 一連の出来事について、港区は「個人のプライバシーに関わることなので、取材にはお答えできない」としているが、裕子さんは「母を虐待しているのは港区です」と訴える。 裕子さん親子にいったい何が起きたのか。スローニュースでは、この出来事を詳しく報じている。しかも、行政による高齢者の“連れ去り”はこの件だけではないのだ。
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