「いつも来てくれる」。サッカー五輪代表監督も認識しているサポーターは大学生 同世代のチーム追い2年半、アウェーの洗礼も共に浴びた
2試合目以降はバケツを持参。スタジアム内に入る前にペットボトルの水を入れて持ち込んだ。なぜ、バケツに入れた水がOKだったのかは定かではないが、「とにかく暑くてきつかった」と振り返る。 ▽重かった優勝カップ、届いた思い 大岩ジャパン、そしてタカヒロさんにとって一つの山場だったのが、今年5月に開催されたU―23アジアカップだ。パリ五輪への出場権を賭けた大会に楽な試合はなかった。それでも準決勝でイラクを下して出場権を獲得。決勝では“因縁”のウズベキスタンに1対0で勝利し、アジア王者として五輪に臨むことになった。 この決勝のスタジアムで、タカヒロさんが「一生忘れない」と話す出来事が起きた。試合後、サポーターは選手たちと喜びを分かち合っていた。すると、主将の藤田譲瑠チマ(22)が観客席にいるタカヒロさんのもとへ近づいてきた。 「持つ?」。そう言った藤田から渡されたのは優勝カップ。「そんなこと言ってもらえると思ってなくて、詳しく覚えてない」。それでも、無我夢中で掲げた時のカップのずっしりとした重さは忘れられない。
「応援が必要だし、やらなきゃいけないんだって改めて思えた」。決意を新たにした瞬間だった。 6月、大岩ジャパンが米国に遠征した際、同行した別の記者が藤田に当時のことを尋ねた。タカヒロさんのことは「毎回、今日も来てるよ、すごいね」と選手らで話しているそうだ。カップを渡した理由は、「発足当初からずっと応援してもらってたので、感謝の気持ちで」と明かしてくれた。タカヒロさんの応援は、選手にも伝わっていた。 ▽少しでも、応援が力になるために 取材の中で、タカヒロさんに率直に聞いてみたいことがあった。 なぜ、ここまで応援するのですか。中には「応援してやってる」みたいな態度の人もいると思う。タカヒロさんにとって応援することの意味とは何ですか―。 「してやってる、とは1回も思ったことがない。好きで追っかけてるだけなので」。きっぱりとした口調だった。少し考えた後、こう話してくれた。「応援が力になるって、ほんの少しだと思うんです。でも、そうなるためにやるしかないって思ってます」 ▽すべてを出し尽くす