広島の土砂災害で見直し検討 「土砂災害防止法」どう変わる?
8月20日に広島県広島市で発生した大規模な土砂災害。広島県災害対策本部の発表によると、死者73名、行方不明者1名、負傷者44名の被害が確認されています(9月16日現在)。 被害が大きくなった背景には、災害現場の大半が「土砂災害危険箇所(以下、危険箇所)」でありながら、自治体に避難体制を義務付ける「土砂災害警戒区域(以下、警戒区域)」ではなかったことが一因とされています。これを受けて、安倍晋三首相は9月1日、「土砂災害防止法」の改正案を成立させるよう国土交通省に指示しました。危険性の高い地域を都道府県が指定しやすくすることを念頭に入れています。
土砂災害防止法はどんな法律?
土砂災害防止法の正式名称は「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律」。1999年、広島市などで大きな被害を出した土砂災害の発生をきっかけに、2001年に施行されました。土砂災害から国民の生命を守るため、危険の周知や警戒避難体制の整備、住宅などの新規立地の抑制などを推進しています。 土砂災害は3つの現象に分類されます。1つ目は「急傾斜地の崩壊」。傾斜度が30度以上で高さが5メートル以上の急傾斜地が崩れ落ちる自然現象を指します。2つ目は「土石流」。山腹が崩壊して生じた土石や渓流の土石が、雨水などと一体となって流下する自然現象です。3つ目は「地滑り」。土地の一部が地下水などに起因して滑る現象、またはこれにともなって移動する現象となっています。 同法は、国土交通省が土砂災害防止対策の推進に関する基本的な指針を作成。それをもとに、都道府県が土砂災害により被害を受ける恐れのある脆弱な地形や地質、土地の利用状況について基礎調査を行い、土砂災害警戒区域を設定します。
「危険箇所」「警戒区域」「特別警戒区域」の違い
今回のニュースでは「危険箇所」「警戒区域」「特別警戒区域」の3つのキーワードがたびたび挙がりました。それぞれどんな違いがあるのでしょうか。国土交通省砂防部に聞きました。 「土砂災害対策が必要な場所が全国にどれくらいあるのかを調査し、危険性があると判断された地域を『危険箇所』といいます。これは調査のみで、何らかの法律に基づいて正式に定められるものではありません。この『危険箇所』を主な対象として、土砂災害のおそれがあると法律で正式に認められた地域を『警戒区域』に指定します。さらに、その『警戒区域』の中でも、著しく危害が生じると判断される地域を『特別警戒区域』に指定し、警戒避難体制を特に整備すべき土地として住民への注意を呼び掛けています」 「警戒区域」「特別警戒区域」に指定された地域は、事前に対策を講じることが義務付けられています。「警戒区域」は、市町村が策定する市町村地域防災計画への記載や災害時要援護者関連施設への警戒避難体制、土砂災害ハザードマップによる周知徹底など。「特別警戒区域」は、特定開発行為に対する都道府県知事の許可制や建築物の構造の規制などがあります。 現在、土砂災害に関する全国の危険箇所は52万5307か所、警戒区域は35万4769か所、特別警戒区域は20万5657か所が指定されています(7月末現在)。