阪神“サトテル“今季12度目の完封負けでも「投げたらあかん!」…なぜ矢野監督は8回長坂に代走を送らなかったのか?
1点を追う9回に中野、大山、佐藤の三者連続三振でゲームセット。勝ち負けのある勝負ごと。全試合勝てるわけではないし、打つ、打たないもある。10回に3回打てば大打者なのだ。だが、失敗しようが負けようが、タテジマの伝統を背負う4番として誇れる姿は見せ続けて欲しい。4番は、喜びも悲しみもすべての責任を負わねばならないチームの顔なのだ。 試合後、その佐藤の所作に苦言を呈した首脳陣やスタッフがいたかどうかはわからない。だが、このままではチームはダメになる。 ベンチの迷いが虎の子の1点を逃す。 8回だ。岸から代わった2番手の宗から一死後、長坂がレフト前ヒットで出塁したが、ベンチは代走を送らなかった。“ピンチバンター”北條が犠打を決めて得点圏に進めても、そのままだった。続く近本はレフト前ヒットを放った。楽天の西川は、後ろから走り込んで勢いをつけたわけではなく、捕球したその場でスローイングする形になったが、ワンバウンドの素晴らしいバックホーム。長坂は炭谷のタッチをかいくぐるように足から突っ込み、クロスプレーとなったが、判定はアウトだった。矢野監督がリクエストしたが、判定は変わらなかった。 ベンチには坂本も片山も控えていた。長坂は鈍足ではないが速くはない。最善を尽くすのであれば、代走を起用すべきだった。ましてや一死一塁である。代走を送っていれば、楽天のバッテリーを含む守備陣も阪神ベンチの出方に神経を使っていただろう。 機動力野球が矢野監督が推し進めていた「オレたちの野球」であり、走れるメンバーも揃っている。 長坂の楽天打線を無得点に抑えていたリードを重要視するべきだという意見もある。加えて長坂は5回に西川の盗塁を阻止、7回にも辰巳を刺して楽天のチャンスを潰した。強肩にプラスして、スローイングのコントロールの良さが際立ち、ここまでの盗塁阻止率は100%。延長を見据えて、その長坂の守備力を捨てきれなかったベンチの考えも理解できる。だが、点を取らねば勝てないのが野球だ。結果論ではなく、長坂のリードと肩を優先した采配には疑問が残る。 スポーツ各紙の報道によると、代表取材に対して矢野監督は「難しいところ。結果的にオレが行ききらんかった(決断しきれない)というのは受け止めている。延長12回という難しさに、その後に代走を出したいところもあった。拳弥(長坂)も(足が)遅いわけじゃない。頭の中に(代走も)もちろんあった」と素直に舞台裏を口にしたという。その指揮官の迷いがそのまま勝敗を分けることになった。