<甲子園交流試合・2020センバツ32校>加藤学園、初陣飾る 独自大会から立て直し /静岡
2020年甲子園高校野球交流試合(日本高校野球連盟主催、毎日新聞社、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)は第3日の12日、県勢の加藤学園(沼津市)が昨秋の九州大会4強の鹿児島城西(鹿児島県)と対戦し、3―1で勝利した。県独自大会で1回戦負けを喫してからちょうど1カ月。悔しさを晴らすかのように、甲子園初陣対決を制した。【倉沢仁志】 【真夏の熱闘】交流試合の写真特集はこちら 試合の均衡を破ったのは六回。1死から1番・太田圭哉(1年)が左中間への二塁打で出塁し、三回の三塁打に続く長打でチームに好機をもたらした。2死後、3番・大村善将(3年)が甘く入った変化球を中前に運び、太田が先制のホームを踏んだ。六回の守備で、主将の勝又友則(3年)が負傷交代するというアクシデントを乗り越え、甲子園のスコアボードに初得点を刻んだ。 八回は持ち前の機動力を絡めて貴重な追加点を奪った。2死から一塁走者の太田が杉山尊(3年)の初球に二盗を成功させる。昨秋の公式戦でチームトップの打率3割9分5厘を残した杉山が直後の140キロの速球を強振すると、打球は深い右中間を真っ二つに破った。俊足の杉山は一度もスピードを緩めることなく三塁を蹴り、頭から滑り込んで本塁を陥れた。今大会第2号となるランニング本塁打でリードを3点に広げた。 エースの肥沼竣(3年)は、四回まで毎回、走者を背負いながら粘り強かった。特に冬場に磨いた130キロ台の直球はキレがあり、緩い変化球を交えて要所を締めた。四回は味方の守備に助けられた。2死二塁から中前打を許したが、中堅手の佐野陸斗(2年)がワンバウンドで好返球し、捕手の雨宮快成(3年)が本塁で二塁走者をタッチアウト。 完封目前の九回は味方の失策がからんで1点を失った。2死一、三塁のピンチも背負ったが、最後の打者を冷静に二ゴロに打ち取って完投。昨秋の公式戦12試合中10試合で完投したスタミナを大舞台でも披露した。 7月の県独自大会の初戦敗退から3年を中心に立て直し、1926年創立の学校の歴史に新たな一ページを加えた。 ◇生徒たち、PVで応援 新型コロナウイルスの影響で、甲子園球場での応援が制限されたため、加藤学園(沼津市)の講堂に応援団やチアリーダー、吹奏楽部をはじめとする生徒たちが集まり、パブリックビューイングが行われた。入場が50人程度に制限され、声援も禁止されたが、生徒たちはメガホンをたたくなどしながら、試合を見守った。 一番の盛り上がりは、八回裏に杉山尊内野手(3年)がランニング本塁打で2点を追加したシーン。吹奏楽部の演奏による「アルプス1万尺」が鳴り響く中、生徒たちは声を出すことを必死に我慢しながら、メガホンを激しくたたいた。表情を変えずに試合を見守っていた応援団員もこのときばかりは満面の笑みで跳び上がった。 試合終了後は甲子園に初出場で初勝利を手にした選手をたたえる声が相次いだ。チアリーダー部の勝又実悠部長(3年)は「全力で頑張る野球部員はキラキラと輝いていた。応援させてくれてよかった」。応援団長の大橋渉さん(3年)は「勝った後の校歌は気持ちよかった。マスクを外して歌いたかったけれど」とはにかんだ。 学習面で勝又友則主将(3年)や肥沼竣投手(3年)らを入学時から指導する菊間一樹教諭(46)によると、野球部の3年は皆、クラスの中心的な存在で、勉強や学校行事も頑張る生徒。「入学時よりも体が大きくなり、県独自大会の初戦敗退からも立ち直って、本当に成長してくれた」と感極まった様子で目を細めた。【深野麟之介】 ◇感動ありがとう 沼津市長 高校野球交流試合について、沼津市の頼重秀一市長は「最終回に詰め寄られ、手に汗を握る展開になったが、ゲームセットの瞬間、今日の暑さを吹き飛ばす喜びが湧いた。センバツ中止の決定から今日まであきらめずに努力してきた選手に、この交流試合は特別な意味を持つものでしょう。感動をありがとう」とコメントした。【石川宏】 ……………………………………………………………………………………………………… ▽第2試合 鹿児島城西 000000001=1 加藤学園 00000102×=3