大阪に会話禁止カフェも、デジタルネーティブ世代がいま最も求める贅沢、それは「静寂」
静寂の中で人と交流する
幸いなことに、静寂を求める人の多くは、静けさと人との交流とを両立させている。米ジョージア州に拠点を構え、野外レクリエーションを通じて黒人の自然愛好家の交流を図っている団体「ピース・イン・ザ・ワイルド」のように、会話禁止ハイキングを、瞑想を取り入れたグループ活動へと発展させたところもある。 「サイレント・ブック・クラブ」では、読書家が集まり、おしゃべりをせずに1時間読書を楽しむ活動をしている。近年、BookTok(ブックトック)やBookstagram(ブックスタグラム)といったソーシャルメディアのサブコミュニティを通じて、人気が急上昇している。 「私たちはこの活動を『内向的な人のハッピーアワー』と呼んでいます」と話すのは、クラブの創設者の1人であるグィネビア・デ・ラ・メア氏だ。クラブは現在、50カ国に1000以上の支部がある。「サイレント・ブック・クラブは、パンデミック後に、負担も少なく気楽な形で人との交流を復活させる場として人気が出ました」 クラブ名には「サイレント」とあるが、クラブのイベントでは、まったく音がないわけではない。集まるのはたいてい地元のカフェで、がやがやした場所だ。 だが日本には、数は少ないが会話禁止のコーヒーショップがあり、カフェが騒々しいのは「あたり前」ではないと教えてくれる。最近、大阪にオープンしたカフェ「清浄(しょうじょう)」では、耳が聞こえない、あるいは聞こえづらい人がメインで働いている。店内は話し声がなく、静かな雰囲気で、客は手話や筆談、または指さしで注文をする。 騒音の少ない隠れ家的な場所を米国で見つけるのは難しいが、不可能ではない。例えば、米スターバックスは最近、1000軒以上の店舗で、「バッフル」という吸音する天井デザインを導入すると発表した。 「静かなレストラン用のYelp(イェルプ、ユーザーによるレビューサイト)」と言われるプラットフォームの Soundprint(サウンドプリント)では、コーヒーショップやナイトクラブなど、世界中の店の騒音レベルをユーザーが判定して情報共有できるようになっている。Soundprintの世界地図上には、1000軒を超える店の騒音判定が表示され、静か(70デシベル以下)から非常にうるさい(81デシベル以上)までランク付けされている。