『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』の生みの親が語る“人生が変わるゲームのつくりかた”「ゲームの面白さはルールで決まる」
アイデアを出す秘訣はない「ただ考えるだけ」
――アイデアは一瞬のひらめきではなく、何度も考え込むことでようやくかたちになるのですね。 米光:よく「アイデアを出す秘訣はなんですか?」と聞かれますが、正直「秘訣はなくて、ただ『考える』だけです」と答えたくなります。結局、「考える」ということを続けるほかありません。多くの人は、アイデアがひとつ浮かぶと、そこで満足して考えることを辞めてしまいます。しかし、考え続けることで、さらに良いアイデアが出てくることもあるんです。 ――考える続けることが、ゲームづくりの秘訣なのですね。 米光:ただ、「ずっと考えろ」と言っても、実際に考え続けられる人は少ないんですよね。だからこそ、紙にキーワードや要素をひたすら書き出す作業が重要になります。無駄だと思えるくらい書き出してみる……。そのプロセスを経ることで、普段ぼんやり考えているときでも、なにかしら考えられる状態を作り出せるんです。つまり、「考える」という行為を具体的な手順に落とし込んでやりやすくしたのが、「自分マトリックス」なのです。
考案したメソッドのせいで教え子が仕事を辞めた!?
――米光さんはデジタルハリウッド大学をはじめ、オンライン講座「ゲームづくり道場」などで、教鞭を執っています。受講生たちにもこうしたメソッドを教えているのでしょうか? 米光:もちろん、やってくれる人もいれば、やらない人もいます。「1日5分で良いから続けることが大事」とは伝えています。ただ、ある受講生は毎日、一生懸命取り組んでくれたのですが、6~7年ぶりに偶然再開した際に「私、『自分マトリクス』のせいで会社辞めちゃいました!」と言ってきたんですよ。 詳しく話を聞いてみると、その子は文章や活字が好きで、ワークショップ以降も毎日たくさん「書くこと」を続けていました。ところが、仕事が忙しくなっていき、書く時間がなくなったんですね。そんなときに、昔書いた「自分マトリクス」をたまたま見返してみたところ、「今、自分は好きなことを書けていない」と気付いた。そして、そのまま仕事を辞めて校閲の仕事を始めたそうです。去り際に「あのとき、仕事を辞めたおかげで、今はやりたいことができています」と言ってくれました。 ――受講後もワークショップで米光さんから学んだことが生きたということですが、まさに「人生が変わるゲームのつくりかた」ですね。 米光:そのとき、「書くこと」の力を改めて感じました。書いているときは自分で気づいているつもりでも、意外と気づけていないことがある。そして、あとで書いたものを見返すことで、改めて新しい発見ができる……。だからこそ、「5分間でいいから書き出してみる」というのは効果的です。 この時間制限には「自己検閲を取り払う」という効果があります。時間内に100個も書くことを目指していると、「これは書いていいかな?」などと、考えている暇がなくなります。その結果、落書きのように自由に書けるようになり、普段は書かないことや言わないようなことが自然に出てくるのです。これを繰り返すことで、意外な発想や面白いアイデアにつながることもあるため、ぜひみんなにも試してみてほしいですね。 <取材・文/千駄木雄大> 【米光一成】 1964年生まれ、広島県出身。『ぷよぷよ』『トレジャーハンターG』『バロック』など、数々のコンピュータゲームの企画・監督・脚本を手がけてきたゲーム作家・ライター。2014年からはテーブルトップゲームの制作をはじめ、『はぁって言うゲーム』などをヒットさせる。最新作『ジャーナリング・オブ・ザ・デッド』が絶賛発売中 【千駄木雄大】 編集者/ライター。1993年、福岡県生まれ。出版社に勤務する傍ら、「ARBAN」や「ギター・マガジン」(リットーミュージック)などで執筆活動中。著書に『奨学金、借りたら人生こうなった』(扶桑社新書)がある
日刊SPA!