『ぷよぷよ』『はぁって言うゲーム』の生みの親が語る“人生が変わるゲームのつくりかた”「ゲームの面白さはルールで決まる」
コミュニケーション下手から誕生した大ヒットゲーム
――職人気質の人間が管理職に就くと、うまくいかないとはよく言いますよね。 米光:当時の僕はとても無愛想でした。「これ、良いよ!」なんてわざわざ言わなくても、仕事なのだから過剰に褒める必要はない。みんなプロフェッショナルだから、「『良いものは良い』と伝えれば十分」と思っていたんです。 ところが、あるとき部下がグラフィックを持ってきた際に、「オッケー」と軽い感じで返答したところ、「やり直します……」と返してきたのです。驚いて「いや、『オッケー』と言ったよね?」と伝えると、部下から「でも、その『オッケー』の言い方、米光さんが『納得している』ときの言い方ではなかったです」と言われてしまった。そのとき初めて、言葉だけではなく、伝え方やニュアンスがどれだけ重要なのかということを痛感しました。 その後も、同じような体験は続きます。そこで、コミュニケーションのズレを楽しみながら、みんなで改善・実感してほしいと思って作ったのが『はぁって言うゲーム』なんです。このゲームでは、実際に「自分が伝えたつもりでも伝わらない」ということを、楽しく体験できます。 ――少しマイナスな気分からゲームが生まれたのですね。 米光:なにかあったら「ゲームにしよう」と考えるタチなんですよ。
新しい発想を生み出す「自分マトリクス」とは?
――本書では自分が興味あることについて制限時間を決めて、ひたすらキーワードを書き出す「自分マトリクス」というワークを紹介されています。いわゆる、ブレインストーミングに近いですが、米光さん自身はこのメソッドをいつくらいから考案されて、ゲームづくりに取り入れられたのでしょうか? 米光:自然と生まれてきた方法なんですよね。「ぷよぷよ」をつくったときには、すでに使っていました。当時、「テトリス」が大ヒットしていたため、会社から「落ちゲーを作れ」と言われたんですが、「テトリス」の二番煎じになるのは嫌だったんです。そこで、最初に「テトリス」の特徴や魅力をキーワードとして書き出してみました。 ――「きっちりとハマったときが気持ちいい」ということや「BGMの『コロベイニキ』がかっこいい」などでしょうか? 米光:僕にとって「テトリス」はその「ソリッドさ」が大きな魅力でした。固いブロックが落ちてきて一直線に消えるという、非常に数学的で論理的なデザインですね。一方で、当時の多くのゲームは、かわいいキャラクターや柔らかい雰囲気が中心でした。そこで、「『テトリス』のソリッドさを禁じ手にして、柔らかくて親しみやすい雰囲気をテーマにしたらどうだろう」と考えたんです。そうして生まれたのが「ぷよぷよ」でした。 ――「自分マトリクス」で『テトリス』のソリッドさを削ぎ落として、ぷよの柔らかさに着目したことで、大ヒットに結びついたのですね。 米光:このときは、まだ方法論としてまとめてはいなかったのですが、キーワードを自由に書き出していくことで、新しい発想が得られるということに気が付きました。それが徐々に、自分の中でメソッド化されていって、今の「自分マトリクス」ができあがったのです。