市は21年から上場支援を開始し、これまでに17社に専門人材を派遣。上場一歩手前の段階になっている企業もあるという。市創業・大学連携課の担当者は「より多くの企業に経営人材を紹介し、地域経済の発展や雇用促進につなげていきたい」と話す。

　ワークの山本彰彦社長は「スタートアップ企業が上場するためには事業の成長性に加え、会社の管理部門への投資が必要になる」と指摘。「上場までに東京では10年かかり、福岡では20年かかると言われているが、コロナ禍でリモートワークが定着し、経営の専門人材が地方にいなくても、オンラインでアドバイスを受けることができるようになった。上場に向けた環境が整いつつある」と説明する。

コンサル助言、人材育成

　中小企業やスタートアップ企業のIPO（新規株式公開）に向けた支援は他の自治体でも行われ、成果を上げた取り組みもある。

　仙台市では、2019年度から民間のコンサル会社を活用し、経営計画や管理規定の策定などを支援している。これまでに15社が支援を受け、3社が上場を果たした。市の担当者は「新型コロナの影響で成長戦略を描けない企業が多かったが、コンサルのアドバイスで財務状況がよくなり、効果は大きい」と手応えを語る。

　札幌市は昨年、東京証券取引所や北海道銀行などと連携し、上場を目指す中小企業の経営者を対象に経営人材の育成プログラムを始めた。上場制度や社内の管理体制に関する専門家の講義を聞くことができる。市の担当者は「東京に集中している人材や情報の壁を取り除いていきたい」と話す。

◆スタートアップ企業＝革新的な商品やサービスで各分野の社会的な課題を解決したり、新たな市場を開拓したりする創業数年程度の企業。成長戦略として、IPO（新規株式公開）やM＆A（企業の合併・買収）を目指すことが多い。