ワークの村松さん（右端）から説明を受けるメドメインの飯塚社長（左から3人目）ら（福岡市中央区で）

　福岡市がスタートアップ企業の上場支援に力を入れている。上場すれば市場から安定的な資金調達が期待できるものの、市が2012年に行った「スタートアップ都市宣言」以降に創業した約1000社で上場を果たした企業はまだない。東京に集中する経営人材を見つけることが難しく、市は専門家を企業に紹介し、上場を後押しする。（林航） 【グラフ】福岡市の創業支援拠点利用者による創業件数

　「上場には会社の管理体制を整えるため、3年ぐらいの準備が必要。我々が一緒に伴走していきます」

　福岡市中央区のビルの一室。市から委託を受けたコンサルタント会社「WARC（ワーク）」（東京）のプロジェクトマネージャー、村松友哉さん（31）が九州大発のスタートアップ企業「メドメイン」の飯塚統社長（33）らに上場に向けた手続きを説明した。

　同社は18年、市の支援を受け、九大生4人で設立された。AI（人工知能）を用いた病理画像の分析によるがんの発見技術を手がけ、画像データを管理・共有するサービスも展開する。医学部がある国内の大学の半数に導入され、従業員は約40人にまで増えた。

　企業の信用を高めるために上場を目指そうと、市が取り組む支援プログラムに応募。採択され、今年8月以降、ワークの社員からアドバイスを受け始めた。

　飯塚社長は「上場に向けて手探りの状態だったので、専門の人に相談できるのはとてもありがたい」と話す。ワーク側に相談しながら、社内規定の整備や経営体制の構築を進め、2～3年後の上場を目標に掲げる。

　市は12年、地域経済の活性化や雇用促進を目指し、「スタートアップ都市宣言」を行った。国家戦略特区の指定による法人税の減税や創業支援拠点を開設するなど、スタートアップ企業の設立を促進してきた。拠点を活用し、今年3月末までに988社が創業している。

　一方、宣言以降に創業した企業で上場した企業はゼロの状態が続く。上場に向けて、監査部門の設立や社内規定の整備が必要となるが、CFO（最高財務責任者）といった経営の専門人材は東京に集中し、福岡には集まりにくい傾向がある。