航空会社ではなく「航空機そのもの」への投資が注目されているこれだけの理由【アライアンス・バーンスタインの見解】
現在、世界で「中間層」といわれる人々が増えており、これにともなって民間航空輸送量も急拡大しています。そのようななか、感度の高い投資家たちから高い注目を集めているのが「航空機リース」です。航空会社ではなく「航空機そのもの」への投資が注目されている理由について、詳しくみていきましょう。米国の大手資産運用会社アライアンス・バーンスタイン(以下「AB」)が解説します。 【画像】「30年間、毎月1ドルずつ」積み立て投資をすると…
需要は回復傾向…航空業界への投資がねらい目
21世紀に入ってから、2001年の米国同時多発テロや世界金融危機、新型コロナウイルスのパンデミックなど、航空業界を揺るがす出来事がいくつも起きました。 にもかかわらず、民間航空輸送量は過去50年間で世界のGDP(国内総生産)の2倍近いペースで拡大しました。世界の中間層は着実かつ急速に拡大しており、今後も2040年まで毎年3.4%の成長率で輸送量が増加すると予測されています。 その需要を満たすためには多くの航空機が必要ですが、供給が追いついていない状況が続いています。 コロナ禍以降、航空需要は順調に回復している一方、航空機メーカーはパンデミック時に生産削減を進めたため、サプライチェーンの再構築に苦戦しています。このため3,000機近い航空機の生産が幻と消え、その分をこれから取り戻さなくてはなりません[図表1]。
「航空機リース」という新たな投資戦略
航空業界において収益を上げるのは容易ではありません。パンデミックや地政学的リスクに見舞われ、いくつかの航空会社は破綻しました。さらに、燃料価格の変動や固定費の高騰などで厳しいコスト管理も求められています。 そのようななか、航空機のリースは新興国の航空会社で広く活用されています。特にアジアや中東地域などで所得水準が上昇し、航空旅行需要が高まっています。こうした需要のダイナミズムはあと80年ほど続くとの見通しもある程です。 飛行機という実物資産を投資家が保有し、必要とする航空会社にリースすることは、航空業界への分散投資という観点でも効果的な方法でしょう。 航空機は標準化が進んでいるため、たとえ、ある航空会社が苦境に陥っても、別の航空会社にリースすることができます。航空会社への投資ではなく、航空機そのものへの投資であることが、この話のポイントです。 しかも航空機リースへの投下資本の単純な平均リターンは航空会社のリターンを上回り、安定した動きを示す報告書もあります。航空機リースは、他の実物資産投資であるインフラ投資や不動産投資信託(REIT)、また上場民間航空会社の株式などと値動きの相関性が極めて低い点も特徴です[図表2]。 航空機リースという投資戦略を分散型のポートフォリオに組み入れれば、市場のダウンサイドリスクを軽減しながら新たなリターン源泉になる可能性があるとアライアンス・バーンスタインは考えます。