“長嶋ボール”は本当にあった!? ヤクルトのレジェンド名捕手・大矢明彦氏が明かしたON秘話 「憧れの王氏がいた早実野球部に入るため」キャッチャーになった
王氏の師匠・荒川博氏「膝を狙って投げろ」
徳光: 王さんで印象に残っていることはありますかね。 大矢: 荒川博さんがヤクルトの監督をされた時代がありましたけど、王さんは荒川さんのお弟子さんだったじゃないですか。それが敵の選手になった。その荒川さんには、よく「王は膝を狙って投げさせろ」って言われたんです。 徳光: 「膝を狙え」っていうのはどこのことですか。 大矢: そう思いますよね。大方の人が(一本足打法で)上げる右足の膝を狙うんですよ。 徳光: そうですよね。違うんですか。 大矢: 軸足の膝なんですよ。 徳光: えっ。 大矢: 軸足の膝を狙って投げさせる。上げた右膝だとばっかり思ってたんですけど、「バカ、お前な、王が上げてる膝を下ろしたら、ちょうど真ん中だろ。よく考えてみろ」って怒られて。 それで、左の膝を狙うようになって。 徳光: それは功を奏したんですか。 大矢: いやあ、そこまで投げきれるコントロールがある人って、なかなかいないですよね。 徳光: でも、安田(猛)さんとか梶間(健一)さんとかは、結構抑えてましたよね。 大矢: 内角からの曲がり球が放れるピッチャーだったんです。 抜群のコントロールで“王キラー”の異名をとった安田猛氏。王氏の通算対戦成績は打率2割5分4厘、10本塁打、16三振だった。 大矢: 安田の場合は何がいいかっていうと、間が短いんですよね。 王さんは一本足でしっかり構えて打たなきゃいけないんですけど、安田はボールを受け取ったら、すぐに投げるような感じでモーションも小さいんですよ。だから、王さんが足を上げるタイミングと安田が投げるタイミングって若干ずれが出てくるんですよ。 でも、安田が投げて、「あっ、デッドボールになる」って思ったインサイドに入ってくるシュート気味のボールをホームランにされたこともあります。「やっぱりホームランバッターはすごいな」って思わせられましたね。
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