“検挙人数”最多はベトナム人や中国人でも「クルド人」に非難が集中 “偽装難民”問題の背景にある「出入国在留管理庁」の複雑な事情
あまりに少ない職員
また、1度目の審査で不許可となっても再審査を求めれば、審査期間は平均4年間となる。その間、申請者の外国人は仮放免者という不法滞在状態が続く。審査中の難民認定申請者に対して「強制送還しろ!」「税金泥棒!」と叫んだところで、審査の結果待ちを必要とする在留外国人としては日本に居続けるしかない。 なぜこんなにも審査期間が長いのかと入管に問い合わせると「申請者ひとりひとりによって審査状況は違いますから一概にはお答えしかねます」との回答だった。 2023年度は1万3000人を超える難民認定申請がなされている。22年度の申請件数は約1万件で、認定審査期間の平均日数は概ね2年間のため、22年と23年の2年間だけでも2万3000件以上の審査業務に追われている。 24年時点で出入国在留管理庁の全国の総職員数は約6300人弱の定員数である。そのうち在留外国人からの各種審査や問い合わせが集中している東京出入国在留管理局の職員は本局と支局を合わせて2000人弱だ。 たったこれだけの職員数で、毎月100万人単位の外国人観光客の手続き対応に従事し、300万人以上が該当するとされる在留外国人の在留資格の各種更新や変更手続きもこなし、常時約2万3000件の難民申請の審査を担当している。
偽装難民の温床
日本語や日本の制度に不慣れな総勢数百万人もの外国人を相手に僅か6000人弱で戦っているのであれば、難民認定申請者1人につき約2年間の審査期間が必要になってしまうのも無理もない話かもしれない。 東京入管で言えば、民間企業で言うところの午後12時からの昼休み時間も来庁者対応の窓口が絶えず稼働しており、盆休みの時期も開庁している。国策によって外国人の流入が増加したが、その手続きをするための入管職員の人数がまったく足りてないのが実情だ。 しかしこの取材中に「人手が足りなくて困ってます」と言った入管職員はひとりもいなかった。繰り返すが「申請者ひとりひとりによって審査状況は違いますから一概にはお答えしかねます」の一点張りだった。 自らの職務や守秘義務規定に忠実なのは分かる。だが、そのためにかえって問題が不透明なものとなり、平均2年間の審査期間によって偽装難民や不良仮放免者の温床を作りあげたということについては、どのような考えを持っているのだろうか。 在留外国人のDさんは「通常のビザの更新だけでも入管は手続き期限を守ったことがない」と言う。一般的な在留ビザには1年から3年の在留期限があり、その期日を過ぎるとオーバーステイとなる。