中島健人はなぜ、挑み続けるのか?夢の海外ドラマ『コンコルディア』を経た、エンターテイナーの現在地
「届けたい」という果てしない欲求がある。日本のエンタメを海外に巻き込みたい
今作で海外ドラマ出演という一つの夢を叶えた中島だが、彼が海外へと視野を広げるようになったのには明確な転機があった。2020年にWOWOWの番組の出演者として、アメリカの『第92回アカデミー賞』の授賞式会場を訪れたことだ。 この年は、ポン・ジュノ監督の『パラサイト』が非英語作品として初めて作品賞を受賞し、4冠を獲得した年。アジア発のエンターテインメントにハリウッドが沸く様を現地で目の当たりにしたことは、俳優としてもアイドルとしても長年にわたって日本でエンターテインメントに携わってきた中島にとって、それまでの考えを揺るがされるような大きな出来事だった。そのときに感じた焦りや悔しさが、いまチャレンジを続ける原動力になっている。 「まず日本人として、しっかりと日本のエンタメ文化を外国に届けていきたいんです。それはやっぱり韓国の著しい成長がきっかけです。 『パラサイト』やポン・ジュノ監督が受賞して、韓国がアジアのエンタメの代表になったとき、日本人として悔しくないわけがない。4年前にオスカーの授賞式に行ってそれを目の当たりにして、自分はどうにかしていまの考えを変えないといけないって急に気づいてしまった。そういった志を一緒にする人々が集まってきたのが、少なくともここ最近の活動期間でした」 音楽面では、キタニタツヤと結成したユニット・GEMNで7月にテレビアニメ『推しの子』のオープニング主題歌“ファタール”を発表。同月には、主演ドラマ『しょせん他人事ですから ~とある弁護士の本音の仕事~』から生まれたプロジェクト、HITOGOTOとして“ヒトゴト feat. Kento Nakajima”をリリースした。いずれも中島にとって初となるストリーミング配信がされており、8月には『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024』のキタニのステージにゲスト参加するかたちで、初のフェス出演も果たした。活動の幅を広げている。 「“ファタール”は、めちゃくちゃバズらせようぜ、届けようぜっていう承認欲求があるキタニタツヤがいたからできたものだと思います。HITOGOTOでも、いま社会のなかで多くの人が思っているSNSにおける嘘と本当に対する感情を曲にしてみたら、それって世界でも共通のテーマだなって思ったりもして。 そういったリアルなものを汲み取って作品にしていきたい。それは、『届けたい』という果てしない欲求から生まれていて、その原点はやっぱり日本のエンタメカルチャーを海外に巻き込んでいきたいということなんですよ」 『コンコルディア』の撮影でも困難をポジティブに乗り越え、成長の糧にしてきた中島。それが可能なのは、自分の中にこうした大きなビジョンがあるからなのだろう。 「本当にそうですね。だから、『あいつ、目標大きすぎるだろ』って言われても、笑われても別に構わなくて、ビジョンが大きくないと面白くない。僕は刺激を受け続けたい人間で、人生は山あり谷ありだけど、山を登っているときが一番楽しいし、出会いがいっぱいあると思うんです。いまは、これまで出会ってこなかった人たちと山頂の景色を見たいって思っているし、その過程のなかで『コンコルディア』という思いがけないチャンスがありました。 海外ドラマに出たい、海外の映画に出たいって散々言っていても普通に出れないでしょって思うなかで、僕が2020年にオスカーを見て焦り出して、英語の勉強をもっと頑張って、仕事で英語のインタビューをやったりして、それを見たフランクがA・Jに選んでくれた。だから全部つながってるなって。ただやっぱり自分で動かないといけないし、人生は1回しかないから、そのまま時間が過ぎていくのは僕のなかではありえないんですよね」