中島健人はなぜ、挑み続けるのか?夢の海外ドラマ『コンコルディア』を経た、エンターテイナーの現在地
天才ゆえの弱み、人間の欲深さを表すキャラクター
本作の舞台は、住民たちの安全や健康を守るために、AIとカメラが住民のすべての行動を監視する街・コンコルディア。20年前に生まれたこの町では、AIが犯罪を未然に防ぎ、病気を予防する。住民たちは監視されることに同意しており、このシステムは社会のなかで何の問題もなく稼働してきたはずだった。 しかし、このAI技術を使ったほかの都市への拡張計画が進むなか、町で初めての殺人事件とシステムのハッキングが発生。コンコルディアはプロジェクトの基盤そのものから危機に瀕する。 中島が演じるA・J・オオバは、コンコルディアのAIシステムをつくり上げた天才技術者。自信家で聡明だが、システムのハッキングによって面目を潰され、事件の解明にあたるなかで恐ろしい真実を知ってしまうという複雑な役どころだ。 役づくりにあたっては、事前にショーランナーのフランク・ドルジャーとリモートでミーティングを行ない、役に対しての認識を擦り合わせていった。 「傲慢で自分自身の意志が強いけれど、クリエイティブでクールでかっこいい。才能の塊だけど野心があって、その野心に飲み込まれそうになるというキャラクターです。ドラマが決まってから、脚本やA・Jのセリフを読んで思ったことをフランクに伝えさせてもらいました。そこでの僕の解釈がフランクの解釈とさほどずれていなかったので、準備としてはお互いに考えの相違なく整えることができたかなって思います」 はじめはクールで少し嫌味なキャラクターとして登場するA・Jだが、 何者かにシステムのセキュリティが破られたことが発覚し、事件が様相を変えていくにつれて、徐々に心の揺らぎを見せるようになる。Netflixシリーズ『バーバリアンズ -若き野望のさだめ-』なども手がけた本作の監督、バーバラ・イーダーが求めたのは、一面的でない彼の内面を表現することだった。 「バーバラからは、焦っているときはもっと人間味のある、自然な感じでやってほしいとか、完璧すぎないところも表現してほしいというふうに言われました。天才であるがゆえの弱みもちゃんと表現しないといけないという考えだったと思います。 (A・Jの心が揺らぐということは)大切にした部分ですね。それがA・Jの魅力というか。欲深さゆえに欲に飲み込まれてしまって、心に潜む悪の要素が出てきてしまうところなど、A・Jは人間の表裏を表すうえでぴったりの役だったと思っています」