「1930年代化するドイツ」を襲うトランプ到来の破壊的な力
急転直下の罷免の翌日、フランク=ヴァルター・シュタインマイヤー大統領(中央)をはさんで視線を交わすショルツ首相(左)とリントナー財務相(右)=2024年11月7日、ドイツ・ベルリン](C)AFP=時事
妖怪がヨーロッパを徘徊している―― ドナルド・トランプ という名の妖怪だ。バイデン政権期間中もずっと、トランプという妖怪は地平線上に見え隠れしていたのだが、選挙戦に入りその姿は禍々しいばかりに明瞭になり、当選が発表されるや否や、破壊的な力を発揮し始めている。その最初の犠牲者がドイツの三党連立政権である。トランプ当選のその日のうちに、三党連立政権は事実上崩壊し、現在少数与党政権として運営している。 今回の三党連立はドイツ連邦共和国史上、かなり異例の組み合わせであった。戦後ごく初期を除いては、連邦共和国における政権は保守(キリスト教民主/社会同盟=CDU/CSU)と社会民主党(SPD)という二大政党にその他の小政党がからみ、ほとんどの期間2党連立で構成されてきた。1980年代に緑の党が登場するまでは、二大政党+1で政治が動いてきた。しかし、2000年代に入り、二大政党がじりじりと支持率を下げ、自由民主党(FDP)、緑の党に加え、旧共産党の左派党、さらに最近になって極右ドイツのための選択肢(AfD)、ポピュリスト政党で左派党から分離したザーラ・ヴァーゲンクネヒト同盟(BSW)などの小党が乱立する状態となっている。
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岩間陽子