多かった令和6年の土砂災害、被災地と教訓共有を 関西大・小山倫史教授 防災リレーコラム
令和6年も残すところ1カ月半ほどになりました。国土交通省によりますと、6年の10月31日時点での土砂災害の発生件数は1329件で、5年の1年間で発生した1471件に迫る多さとなっています。 1月1日に発生した能登半島地震では、石川県能登地方を中心に甚大な被害が発生しました。この地震により456件もの土砂災害が発生し、そのうち424件は石川県で発生しました。 9月下旬に秋田県や石川県で線状降水帯が発生した大雨では、21日に石川県に大雨特別警報が発表されました。この記録的な大雨により、能登半島地震の被災地である輪島市、珠洲市、能登町を中心に仮設住宅が浸水被害を受けるなど、甚大な被害が発生しました。この大雨においても272件(うち石川県で267件)の土砂災害が発生しました。 また、7月には北日本に停滞した梅雨前線の影響で、東北地方の日本海側を中心に記録的な大雨となり、山形県を中心に67件の土砂災害が発生しました。さらに8~9月、非常に動きが遅く、迷走を続けた台風10号では静岡県、神奈川県、大分県、宮崎県を中心に128件もの土砂災害が発生しました。 近年、気候変動に伴う「極端現象」(極端な高温、低温や強い雨など、特定の指標を越える現象)により、これまで被災経験がなかった、あるいは少なかった地域においても想定していなかった災害が発生するケースが増えてきています。特に大規模な災害は、その発生自体が稀有(けう)であることから、個々人の実体験から対策を立てることには限界があります。 したがって、被災地域の災害対応における課題や教訓を世代を超えて継承することや、被災経験がなかった、あるいは少なかった地域と被災地域が連携したり情報共有したりすることがとても重要となります。また、被災経験がなかった、あるいは少なかった地域においても、想定外のことが起こりうることを理解し、普段から想定外を想像して備えておくことが重要です。(関西大社会安全学部教授、小山倫史=こやま・ともふみ)