公立の男子校・女子校は共学にすべきか? ジェンダー平等か伝統か、埼玉で巻き起こった議論の決着は―
共学化に反対する関係者らは「伝統的な校風など特色が失われる」「異性が苦手な生徒にとっては別学の方がいい」などと指摘する。 7月下旬には、県内公立校の在校生約50人が、別学維持を求める約3万4千人分の署名を県に提出。参加した女子高校に通う生徒(16)は、自身も別学によって救われた経験があるといい「中学生が別学を選ぶ権利を守りたい」と話した。 ▽当事者世代と中学生で考えに違いも ただ、同じ別学の関係者の間でさえも賛否は割れた。 浦和高の同窓生を対象に行われた県教委の意見聴取会では「男子校でしか維持されない伝統などたいしたものではない」という発言に「帰れ」などとやじが飛ぶ一幕も。 浦和高の卒業生で、共学化に賛成する意見書を県に出した埼玉県川口市の碇康雄市議(61)は「社会のリーダー育成を教育目標とするなら、同じように男女がいる方が良い」と話す。 意見書に名を連ねた東京学芸大の岩田康之教授(61)も「文武両道の浦高らしい行事や教育を残したまま共学化することもできる。女性の後輩が社会で活躍する姿を見たい」とする。
県教委が今回の結論を出す前に、県内の中高生やその保護者を対象に実施したアンケートでは、記名のある回答約6万5千件のうち高校生は6割弱が「共学化しない方がよい」と答え、「した方がよい」は1割未満だった。中学生は「どちらでもよい」が半数超を占め、世代でも違いがあった。 ▽「さまざまな声、擦り合わせは困難」苦渋の県教委 共学化について、約1年間にわたり検討してきた埼玉県教委は今年8月22日、県立の別学高計12校について「県教委が主体的に共学化を推進していく」とする報告書を公表した。 ただ、いつまでに共学化するのか、段階的に進めていくのか、といった具体的な見通しには触れず、何とも歯切れの悪い結論にとどまった。 「さまざまな声を擦り合わせることは困難だった」。県教委の日吉亨教育長は報告書公表後、県庁で開いた記者会見で、苦渋の表情を浮かべた。 報告書では、別学にも県民から一定のニーズがあり、埼玉では県立高の共学校、男子校、女子校を選択できる状況にあることから「男女の教育の機会均等を確保している」との認識を示した。
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