「ハエの触角に目ができる」…!? かつてクローン技術の最前線で行われていたヤバすぎる「裏の研究」
人間の再生医療の可能性
羽生進化の過程で、そうした能力を失ってしまったのでしょうか? 山中はい。なぜそうなったかにはいろいろな考え方があって、すべて仮説です。たとえば、そういう再生能力に必要な遺伝子はがんの発生にも関わってくるから、という説があります。再生のために細胞が急速に増殖するので、一歩間違えると大きなリスクを伴う。増えなくてもいいところが増え出すと、がんになってしまうんですね。僕の仮説は、寿命の長さが関係している、というものです。 哺乳類のように寿命が長くなったにもかかわらず、再生能力をそのまま持っていると、生殖年齢に達するまでにかなり高い確率でがんになってしまう。人間の場合、十数歳になるまで生殖できないので、その間にがんになってしまうと、種が途絶えてしまいますよね。だからやむなく再生能力を犠牲にして、寿命のほうを選択した――のかもしれません。それは全然わからない。証明のしようもありません。 でもアメリカの国防総省などは、人間にも何とか再生能力を取り戻せないかと真剣に研究しているようです。地雷で失われた兵士の足が再生したらすごいことですからね。 羽生iPS細胞が実用化されてきたら、そういうことも――。 山中iPS細胞でそこまでできるかどうかは、ちょっとわかりません。でも研究のきっかけになる可能性はあります。 『羽生善治も絶賛「チェスよりも圧倒的にいい」…日本の将棋ソフトが巨大資本のチカラなしに「飛躍的進化」を遂げた意外な理由』に続く
羽生 善治、山中 伸弥