「監督は練習で自慢話をしている」「そんなこと僕らに言われても」からのリスタート…“かつての強豪”東洋大姫路が17年ぶり近畿大会復活Vのウラ話
履正社、大阪桐蔭…強豪校は「別世界」という意識
いわば、履正社や大阪桐蔭の取り組みは“別世界”というのが当時の東洋大姫路の選手たちの受け止め方だった。 「僕の情報提供、ではなく自慢話という受け取り方だったから、理解できなかったんでしょうね。足し算引き算ができないのに、いきなり因数分解の話をされても、という感覚だったんでしょう。でも、こちらが足し算引き算までレベルを下げる訳にもいかないし、そうこうしていたら下級生もどんどん入ってくる。僕はレベルを下げずに言うてきたつもりです」 履正社時代は長年二人三脚でチームを指導してきた松平一彦部長(現・大体大監督)や、多田晃コーチ(現・履正社監督)と意見交換をしながら、やりたいことをすり合わせながら指導してきた。今では“三人一体”だった取り組みをすべて1人で担う。ただ、それ以前に選手たちのやる気、そして勝つことへの執念が感じられない。それでも指揮官はハードルを下げるつもりはなかった。 「当時は“考えてやる”という習慣がなかったんですよ。言われたことを必死にはやってくれるけれど、その先がね。なかなか試合に反映させるのは難しかったですね」 言葉のみで思いを伝えるのは難しい。 就任1年目の夏の県大会は4回戦、2年目の夏の県大会は5回戦で敗れた。昨秋の県大会も2回戦で敗れたが、ようやく浮上のきっかけを掴み始めたのが今春の県大会。センバツ帰りの報徳学園を準々決勝で破り、4強まで進出。夏の県大会も4強まで勝ち進み、岡田監督が声を掛けた“1期生”の2年生主体の今秋の新チームの戦いぶりは大いに期待された。
「強打の東洋大姫路」を作りたい
だが、今秋の県大会でも苦しい戦いは続いた。県大会の3回戦の西脇工戦は1-0の薄氷を踏む勝利となり、準々決勝の明石清水戦ではわずか3安打で2得点だった。 それが準決勝の神戸国際大付戦では13安打10得点と一気に打線が爆発した。近畿大会でも4試合で計40安打を放つなど、攻撃面では徐々に“上昇の兆し”が見えつつある。 「僕は(東洋大姫路に)来た時に『強打の東洋大姫路』を作りたいって言うてたんですけれど、それがなかなかね……(苦笑)。この春から低反発バットに移行することはもちろん意識していましたけれど、履正社の時はバッティング練習で木製バットで打っていましたし、何か特別にしていることがあるかと言えば、特にはないです。ただ、甲子園の解説をしていて思うのが、去年までと比べて明らかにボールは飛ばなくなりました。 だから今まで以上にバントや走塁は重要になってきます。でも、履正社の時もそうだったんですけれど、やっぱり意識の問題ですよね。選手らもここまで来て、ようやく気づいてきたことがあるんちゃいますか。それが県大会の後半に徐々に結果として出てきて、打線が繋がったと思います」 今秋の近畿大会。準決勝の予定だった今月2日が雨天のため試合が順延となり、軽めに練習した後に、履正社が19年のセンバツ初戦、そして夏の甲子園の決勝で対戦した星稜・奥川恭伸(ヤクルト)との試合の映像を選手たちに見せる時間を設けた。 「雨で練習もできないし、じゃあ……という感じで(見せました)。良い投手を攻略する時はこういう風に変わるんだよ、というのを見てもらいたかったんです。春はこういうボールで三振してしまっているけれど、夏はそのボールを振らずに見送れるようになったとか。そういうところを見てもらおうと思ったんです」 岡田監督は「僕からはああせい、こうせいとは言うてないんですよ」と振り返る。 「履正社の時もね、選手らに言うてたのは、これだけ奥川君の前で打席に立っているお前たちが一番(奥川投手の特徴を)分かっているやろうと。奥川君はあの世代でナンバーワンのピッチャーでしたし、奥川君を打てたら日本一になれる。ならば、どうすればいいのか。それぞれが考えてやれよとは言ったんです」 岡田監督が東洋大姫路の監督に就任することを聞き、東洋大姫路へ進学したエースの阪下は、岡田監督の指導についてこんなことを言っていた。 「岡田先生はヒントを言っても答えは絶対に言ってくれないんです。だから自分たちで考えないといけない。(岡田監督の言葉を受け)最初は正直、自分たちもどうすればいいのか分からなかったんですけれど、今は少しずつ考えられるようになりました」
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