女子ボクサーが実践する「ファスティング」…ダイエット以外でも勧める「意外な理由」
ファスティングと出会う
2013年2月、『ファスティングダイエット』というタイトルの電子書籍が刊行された。著者はスポーツトレーナーの藤原茜。 【写真】井上尚弥をデビュー前から撮りつづけたフォトグラファーがとらえた変化 1987年7月18日生まれの藤原は、日本体育大学を卒業後、スポーツ系のコンサルティング会社に就職するも肌が合わず、3カ月で退社。ほどなくスポーツジムのインストラクターを始める。やがて、パーソナルトレーナーとして独立。その過程で「ファスティング」の源となる学問と出会った。 「2010年か、2011年だったかと思います。トレーニングの師匠の紹介で、山田豊文先生の存在を知り、分子整合医学に惹かれました。 人間に必要な栄養素の過不足を解析して食事を摂り、体内環境を整えるといった内容です。当時は『乳製品やタンパク質をしっかり摂りましょう』というスポーツ栄養が一般的でしたが、摂取することによるリスクは意識しない人が大半でした。あるいは『アスリートは大量に肉を食べましょう』というアドバイスを耳にしたことがある人は沢山いると思うんですが、肉を食べる量に比例して、食物繊維やミネラルなど他の栄養素を摂らなければ、筋肉が攣りやすくなったり、骨がもろくなるリスクもある。 栄養素の摂取バランスによるメリット、デメリットを科学的に伝えるのが、分子整合医学です。年に 2~3回京都で、3~4回は東京で山田先生の講習を受けました」 自分が良いと信じて食していた物が、別の側面もあるという事実を、知らないよりも知っておいた方がいい――当時の藤原は、その学問にのめり込んだ。 「4年ほどかけて、山田先生と、分子整合医学(分子矯正医学)の提唱者であるライナス・ ポーリング博士の娘、リンダ・ポーリング氏が認定する 『オプティマルヘルスアドバイザー』 の資格を取得しました。もちろん、栄養や食事の書籍なども参考にしながら独自にも勉強しましたよ」
体をコントロールするためのファスティング
自身の体も大きな変化を感じる。 「体調が悪くなっても、食生活で調整できるようになりましたね。不調時でも落ち込まなくなったし、食べる物で悩む機会もゼロになりました。 飽食の時代には気付き難い、『食べる必要がないものを食べている』ことを理解したんです。豊かな人生を過ごすために、食べない選択ができるようになりました。以来、私も1~2 年に1回、4~6日程度のファスティングを行うことで、心身ともに健康的に過ごせている自負があります」 自らの言葉でその効果を伝えたいと考えた結果、電子書籍刊行に辿り着いた。 「非常にデリケートな部分なので、声を大にして言えない部分もあるのですが、私がきっかけを作れたらと考えたんです。ファスティングと前後の食事指導で長年悩んでいた便秘やむくみが解消された。脂肪が減少して15キロ程痩せた。味覚が変化して、たばこやジャンクフードを避けられるようになった体験者がいらっしゃいます」 とはいえ、本を書き終えてから10年以上が経過し、著者のファスティングに対するアプローチも変化している。 「現在は積極的にファスティングの推奨や啓蒙は行っていません。なぜなら専門家の知識以上に、本人の意識改善が必要で、それによって結果が変わるからです。端的なダイエットであるため『食べなければいい』と思い違えてしまうと、継続的な健康や美容に支障をきたす可能性があります。 私が直接指導できる方もごく僅かなため、安易にファスティングを取り入れて効果が出ない、もしくは不調が出ても、責任を取れないんですよね。私が本を出したのは20代の頃。若い時って、そんなこともお構いなしに突っ走れるから怖いですよね(笑)」