女子ボクサーが実践する「ファスティング」…ダイエット以外でも勧める「意外な理由」
藤原の持つ強みと魅力
2017年12月のプロデビュー戦は判定負けだった。そこから5連勝し、2022年6月に日本女子フェザー級、同年12月にWBO女子アジア太平洋スーパーバンタム級、2023年6月に女子東洋太平洋スーパーバンタム級と、3度のタイトルマッチを経験するが、いずれもベルトを獲得するには至らなかった。 その藤原が2024年4月1日に、タイトル初挑戦で引き分けた相手を下し、念願の王座に就いた。 「今回、4回目で獲れたのは、気持ちの変化があったからだと思います。振り返ると、私、スマートにやる風でいて、結構、手を抜いていた部分がありました。100パーセントの振りをしながら、自分より3~4倍のキャリアのある相手だったら、『勝てないじゃん。だったら、どこかで出し抜けないかな。最小限のリスクで勝てないかな』みたいな思いがあったんです。3回目まではそうでした。 でも、そんな才能も実力も技術も無かったんです。相手もジャッジも人なわけです。特にジャッジの心を引き寄せるような戦いは一切していなかったですね。『勝てたらいいな』くらいのメンタリティーだったんですよ、きっと。チャンスなのに、いかなかったシーンもありましたしね。スタミナが切れるのが怖くて出られないっていうところもありました」 戴冠の大きな要因となったのは、新たなトレーナーである小口忠寛の指導だった。 「もう、練習段階から死ぬほど追い込まれました。えげつないメニューでしたよ。『もう無理です』というところから、さらに絞られましたから。でも、小口さんにしてみたら、そこからがスタートなんですよね。練習で乗り越えていなければ、試合では出ませんよ……。 だから、4月の試合前は不安が無かったですし、開始のゴングからガンガン前に出て、臆さずにパンチをふるう。本番でそういう勇気を出せるように仕上げてくれたんです。迷わずに手を出す。効かせたら詰める。引かない。そういう当たり前のことを丁寧に、コツコツやることが、勝利に結び付いたんですね。それって、お店の経営も、ダイエットも同じですよね」 藤原の所属するワタナベジム会長、渡辺均は言う。 「スポーツトレーナーとしての藤原は、多くの会員を虜にする魅力を持っています。そういう方がファンになり、試合の応援に駆け付ける。それが彼女の人間力でしょう。ボクサーとしても、まだまだ成長してほしいですね」 7月末に初防衛戦が決まった藤原は結んだ。 「お店を10年やると、コロナの苦しい時期など、高い商品だけを売ればいいとか、大口の顧客をメインにとか考えた時期も一瞬ありました。でも、『なぜ、このお店を始めて、どういう目的があったのか』という初心に戻ったんです。それで、一つ一つの商品をブラッシュアップして、『どうしたら、お客さんが喜んでくれるかな』とこの1~2年で見直したんです。 ボクシングも同じでシャドウひとつにしても、その意味や課題を考えて丁寧にやる。商売がリングと結び付いているんですよ。世界タイトル挑戦まではやりたいですね。ビジネスは、いずれ都内に別の店舗を構えてみたいという夢があります」 二足の草鞋を履くどころか、いくつもの顔を持つ日本女子フェザー級チャンピオン。初防衛戦で、どんなパフォーマンスを見せるか。客席は、ボクサーである彼女のファン、焼き菓子の購買者、トレーナーである藤原に心酔する教え子で埋まりそうだ。
林 壮一