大晦日「曙太郎vs.ボブ・サップ」戦の様子　 乾晋也

いまから21年前の2003年12月31日は、日本のテレビ史においても特筆すべき一日となっている。日本テレビ、TBS、フジテレビがいずれもゴールデンタイムに格闘技を中継。なかでもTBSが放映した「Dynamite!!」のメインイベントとして行われた「曙太郎対ボブ・サップ」は注目度が高く、試合が中継されていた23時00分~23時03分の4分間は、視聴率でNHK紅白歌合戦を上回った。もちろん、民放番組が視聴率で紅白を超えたことは後にも先にも、このときだけである。 「ノゲイラ対ミルコ」の壮絶な闘い。ミルコの大晦日出場は!? 元横綱は、いかにして大晦日の舞台に上がることになったのか。12月19日刊行の『格闘技が紅白に勝った日　2003年大晦日興行戦争の記録』(細田昌志著、講談社刊)から、その舞台裏をお届けする。

去る者は追わず

写真: 乾晋也

「曙K-1参戦」「大晦日にボブ・サップと激突」の衝撃は大きく、格闘技界を激震させた。 「会見を終えた直後の気持ちは『今年は逆転ホームランを2本打ったなあ』ってこと。一つは真夏のラスベガスでタイソンをリングに上げたことで、もう一つが曙を口説き落としたこと。ただ、一番嬉しかったのは『今年はやめよう』って言ってたTBS事業局長の児玉さんが手放しで喜んでくれたこと。TBSのバックアップがあるのとないのとでは全然違うから」(谷川貞治) 「脅威的ですね。曙に対抗できるカードはないかも。戦いは嫌いじゃないが、負けいくさには出ていきたくない。(中略)テレビ局と調整を進めているが、9日に開催発表ができなければ、年末はないでしょう」(榊原信行のコメント/『スポーツ報知』2003年11月8日付) 「3年前から、高田道場で練習したいというリクエストがあった。(中略)ウチには敷居はない。いつでもいらしてください」(高田延彦のコメント/同) とにもかくにも、フジテレビの動向に注目が集まった。TBSは「曙対サップ」、日本テレビは「猪木祭」、そんな強敵同士の一騎打ちに割って入るリスキーなことをするだろうか。