【#佐藤優のシン世界地図探索85】北朝鮮軍の「ウクライナ参戦」から変わる世界ゲームのルール
佐藤 ウクライナから攻めこんで来た傭兵は強いです。ならば「訓練して来い」となったんだと推測できます。やはり、実際に現場を経験していないと訓練だけでは限界があるじゃないですか。 ――そりゃ、鉄筋を曲げたり石を割ったりするより、生身の人間を殺した方が強くなりますから。 佐藤 まだ、数千人規模のウクライナ兵と傭兵がクルスクに残っているから、それを「殺して来い」となったわけですよね。 ――とてもわかりやすい構図です。 佐藤 北朝鮮の砲弾やミサイルは、実際に使ってみないとどのくらい正確かわからないですからね。 ――北のミサイルがどんどん改善されて、精度が上がっていると報道されていました。ロシア占領地の住宅建設で、北の労働者が壁紙をキチンと貼る技術が生かされてます。 佐藤 そういうことです。 ――すると、北朝鮮兵士はクルクスでたくさん死にながら改善されていくのですか? 佐藤 そうなるでしょうね。 ――捕虜交換で、クルスクで捕まえたウクライナ兵が出て来なかったら、「ちゃんとやっているな」ということになるんですね。 佐藤 対テロ戦ですから、戦争のルールと違って捕虜にする必要がありません。あくまで「皆殺し作戦」です。捕虜を取ったりするのも面倒じゃないですか。だから、「北朝鮮のみなさん、ウ軍と遭遇したらもう全部殺しちゃっていいから」ということになっています。 ――わかりやすい命令です。 佐藤 ウクライナのメディアでは、北朝鮮兵を要人テロに使うと報じられています。しかし、肌の色が違って言葉も通じない北朝鮮兵が、土地勘もないのにテロができると思いますか? ――絶対に無理だと思います。 佐藤 そう、そんなマンガみたいなことはしません。 だから、ロシアの仕切りを全て理解していないとならないのです。ウクライナとの戦いは特別軍事作戦で、クルスクは対テロ作戦です。このロシアの仕切りさえわかっていたら、今回やっていることは、ロシアからすれば何も問題ないし、合理的なんですよ。 ――さらに極東の訓練施設では、ロシアは北朝鮮兵士にドローンの動かし方を教えてるんですよね。これ器用にできますかね? 佐藤 できるんじゃないですか。 ――北兵はすでに実戦経験を積み始めています。報道によると、11月4日にウ軍から砲撃を受け、翌日ウ軍と北兵は初交戦しています。しかし、この交戦で北兵はかなりの数が戦死したみたいです。