勉強を三日坊主で終わらせないためにはどうすればいい? 大人の脳の使い方【50代からの脳トレ②】
年齢とともにもの忘れが増えたり、名前を覚えられなくなったり、勉強したことがなかなか身につかなかったり…。「もうそういう年齢だし」と諦めるのはもったいない! 脳は、80歳を過ぎてもなお成長し続けることができる、体の中では稀有な存在だ。大人ならではの「脳の使い方」を、脳内科医の加藤俊徳さんに教えてもらった。
挫折してしまうのは脳の「コンディション不良」
キャリアアップのための資格取得、学生時代にやり残した英語の勉強など、大人の学び直しが人気だ。でも気がつけば、せっかく買った参考書や教材は“積読(つんどく)”状態、レッスンチケットは消化しきれず期限切れ…。 そんな「続けられない自分」を嘆きたくなるが、「続かないのは性格や実行力のせいではありません。脳のコンディションが整っていないからです」と1万人以上の脳を見てきた加藤先生。 「運動にたとえると、スポーツをする前には必ず準備運動をしますよね。また、トレーニングを積んだり食事に気をつけたり、といった体づくりにも日々気をつかうでしょう。それによってケガを予防したり、高いパフォーマンスが発揮できる。 それと同じことが脳にもいえます。 脳は新しいことを始める際に大量のエネルギーを必要とします。そのためコンディションも万全な状態である必要があります。ところが、社会人になって日々同じような仕事を繰り返していくうちに、使う脳の場所=脳番地に偏りが出てきて、脳全体で見たときにコンディションが低下してしまうのです。 そうと知らずに新しい勉強にチャレンジしようと思っても、土台がいい状態でないことに加え、学生時代とは脳の使い方そのものが変わっているために、なかなか頭に入りづらく、成果が出にくい( ※詳しくは第1回<大人になると暗記できなくなるのはなぜ?脳には役割ごとに8つの脳番地がある!?>参照)。 そして、『勉強する気力が萎える』という負のスパイラルに陥ってしまうのです」(加藤先生)
脳の基礎体力を上げる「ファイアリング」
コンディション良好な脳は、自分でつくれるのだろうか? 「もちろんつくれます。脳には、それぞれの部分で異なる役割を果たす『脳番地』があります。思考系、記憶系、理解系、感情系、運動系など8つありますが、脳のコンディションがよい状態というのは、それぞれの脳番地が活発に働き、かつ脳番地間の連携がスムーズな状態を指します。 脳には1000億を超える神経細胞(ニューロン)があり、ニューロン同士を結ぶのがシナプス。目や耳から情報が入るとニューロンの活動が盛んになり、その情報がシナプスに送られ、また次のシナプスへ…と脳は連携プレーで働きます。 ニューロンやシナプスの情報のやり取りは電気信号ですが、電気信号が盛んな状態を『ファイアリング』(=発火。脳科学用語でニューロナルファイアリングともいう)といいます。脳番地でファイアリングが起きると次の脳番地でまたファイアリングが起こり…という流れで、それぞれの脳番地と、それをつなぐネットワークの両方がファイアリングを起こす。それこそが脳が活性化している状態で、優良コンディションの脳というわけです。 ところが、普段使っている脳番地に偏りがあると、あまり使われていない脳番地ではファイアリングが起きにくくなり、そこで連携プレーが止まってしまいます。それぞれの脳番地で次々とファイアリングを起こし、脳の連携プレーを強化してコンディションを良好にするには、脳全体を偏りなく使うことを意識するのが大切なのです」