「鍛えていればいつまでも元気!」は残念ながら関節に当てはまらず…筋肉先生・谷本道哉流<関節の負担を減らすちょっとの工夫>とは
日本生活習慣病予防協会の発表によれば、いわゆる肥満に該当する人は男性 の33.0%、女性 22.3%(2020年12月発表)に。健康管理維持を考えれば、肥満対策はもはや日本人全員の課題とも言えそうです。一方、テレビでも人気の谷本道哉先生は70歳まで働けるカラダを維持することを目標に掲げ、各種の運動や体操を提唱してきました。その先生いわく、消耗品である関節の扱いには特に注意してほしいそうで―― 【イラスト】谷本先生オススメのちょこまか走り。足は大きく踏み出すのではなく、足裏全体での接地を意識。ピッチはなるべく上げる * * * * * * * ◆有酸素運動の注意点 しっかりとした有酸素運動はメタボリスクを強力に抑える合言葉ともいえます。 ただし無理は禁物であることも忘れてはいけません。有酸素運動は無理がすぎると、極めて希まれではありますが、心不全などの致命的な事故を起こすことがあります。 運動を行った際、心臓のあたりに痛みや違和感を覚えるときは無理せず、すぐに中止しましょう。体調の悪いときは、中止するか強度と量を落とします。また、脱水は循環血の不足から心不全につながりやすいので水分補給は怠らないようにしましょう。 かつて東京マラソンに参加したお笑い芸人の方が、心室細動を起こし、一時的に心肺停止になったことがありました。このときは大きなマラソン大会だったこともあって救急の対応がよく、大事に至らずにすみましたが、いつでも万全の対応で救命処置をしてもらえるとは限りません。 そしてもう一つ無理がきかないことがあります。それが関節です。
◆関節を痛めるとなかなか治らないワケ 体は「筋肉」を使い、「骨」を「関節」まわりに動かすことで動作します。 このうちの筋肉と骨、実はこの二つは何歳になっても鍛えれば強くなります。しかし関節は、強くならないわけではありませんが、極めて回復が遅く、酷使することで消耗しやすい部位であることをよく知っておく必要があります。 その理由は、関節内には血管が走っておらず、新陳代謝(構成組織の入れ替わり)が非常に遅いことにあります。新陳代謝が遅いということは、酷使されると回復が追いつかなくなるということ。そして痛めてしまうとなかなか治りません。 最もよく行われる有酸素運動といえばジョギングですが、ジョギングは着地の衝撃が結構強い、ハイインパクトな運動でもあります。着地の衝撃は一般的なジョギングで、体重のおよそ3~4倍。普通歩行の1・5倍程度と比べるとかなり大きいことが分かります。 ジョギングのような運動を週60分以上行っている人では、週15分未満の人に比べて、膝関節の骨棘(変形性膝関節症の診断指標の一つ)が形成されている人の割合が、3・5倍もあったという研究報告もあります。 「鍛えれば強くなる、鍛えていればいつまでも元気で若いときと変わらずいられる」という話は、関節には残念ながら当てはまりません。 このことは、よく運動をしている人が陥りがちな典型的な落とし穴といえます。消耗品である関節をいたわり、無理のない運動をするようにしなければいけません。