「麻布台」一度は行きたい絶品店~古い住宅街が最新タウンに
なぜ開業20年で最高集客?~最強の街を作る執念
麻布台ヒルズから西へ800メートル。「六本木ヒルズ」は2023年開業20周年を迎えたが、その集客力に衰えはない。街を訪れる来場者数は年間4000万人。しかも2023年、商業施設の売り上げが過去最高を記録した。 開業時から営業する「エストネーション」六本木ヒルズ店店長・吉谷大道さんは「六本木ヒルズも『エストネーション』も2023年が一番成績が良かった。開業の20年後がピークとは想像していなかったです」と言う。 街の魅力を保ち続ける秘密がある。朝8時、館内のカフェを使って開かれるのは、今や定番となっている「ヒルズブレックファスト」。ワンドリンク500円で「我こそは」という人のショートプレゼンを聞くことができる。ヒルズの住民に親しまれる毎月のトークイベントだ。
初夏に開かれる恒例のイベントが、ビルの屋上に作られた水田で行われる田植えだ。都会の真ん中で自然に触れられると、近隣から人が詰めかける。 ヒルズの街では人を惹きつけるさまざまなイベントが開かれる。それを仕掛けているのが森ビル・タウンマネジメント事業部だ。街づくりに協力するのはコラボレーションパートナー企業。ヒルズ内に広告を出してもらい、その収益をイベント費用などにあてている。 森ビル独自のタウンマネジメントを作り上げたのは、2011年、創業家の森稔から社長を引き継いだ辻だった。就任当時、「一つの街としてどう育てていけば良いのかと考え、タウンマネジメントという新しい分野を立ち上げました」と語っている。 1955年、森ビルの前身となる「森不動産」は新橋で設立された。森稔は、住宅が密集した東京にビルを建て、空間を高度利用することで、安全で緑多い街へ作り変えることを決意する。 森は長年住む住民ら一軒一軒と、自ら厳しい交渉を続け巨大な再開発を形にしていった。
そんな森ビルで若き辻が担当したのが、住民と地道な交渉を続け開発した「六本木ヒルズ」だった。街の完成間近、辻は森から「開業後の提案をまとめてほしい」と命じられる。 「せっかく一つの大きな街をいろいろな人と一緒につくったのに、出来上がった後はオフィスはオフィス、住宅は住宅とバラバラにやっていくのはもったいない。一つの街として運営したほうがいいと」(辻) 辻は試行錯誤の中で、街を一つにするタウンマネジメントを形にしていった。 「(けやき坂の)クリスマスイルミネーションも初年度にタウンマネジメントチームが企画して立ち上げました」(辻) そんな格闘から20年、「六本木ヒルズ」に関わる人々には他にない繋がりができている。