「有望だと思う会社を選んで投資」することの難しさを金融ジャーナリストが解説。コロナ禍での投資、ワクチンを開発したファイザーよりも、リターンの大きかった会社は…
◆経済学者と投資家の言葉 新型コロナウイルス感染症のパンデミックが始まり、世界中がパニックに陥った頃には、ワクチンは開発できるのか、それも世界中の人を守るのに十分な量を生産できるのかは誰にもわからなかった。 先見性のある投資家が、ファイザーのような多国籍製薬会社が記録的な速さでワクチンを開発できると予見したとしよう。実際、まさにそのとおりになった。 パンデミックの始まった頃にファイザーに1万ドルを投資していたら、1年後には1万1900ドルになっていた。そのときには同社のワクチンを接種しようと世界中で数百万人が列をなしていた。 一方、パンデミックの最中に数百店舗を閉鎖したスターバックスの株に同じタイミングで1万ドルを投資していたら、1年後には1万4200ドルになっていた。ファイザーに投資するよりリターンは20%も多い。 投資をしていると本当にストレスがたまるのはここだ。 株式市場でのワクワクするような投資話を聞くと、僕はいつも経済学者バートン・マルキールの格言を思い浮かべる。 「息せき切って話す人間からは絶対にモノを買うな」(1)。 ウォーレン・バフェットも同じようなことを言っている。 「拍手喝采を受けるような投資話には注意せよ。最高の投資はだいたいあくびが出るような話だ」(2) バーのハッピーアワーではおよそ話題に上らないような、そしてメディアの注目を集めたり推奨銘柄になったりしないような退屈な会社が、株式市場では劇的に成長することがあるとバフェットは指摘している。
◆ドミノピザの成長 2000年代半ば、ドミノピザはニューヨーク株式市場に上場した。以来同社の株は数十年に一つあるかどうかのすばらしい成長を見せた。 上場時に1万ドルで買ったドミノ株の価値は、15年後には37万ドルを超えていた。 この情報を手に、タイムマシンに乗ってドミノがIPO(新規株式公開)をした日に戻れるとしよう。そして家族や友人にこう伝える。 「いいかい、何に投資するべきか教えてあげるよ。絶対にドミノピザの株を買わなきゃダメだ!」 おそらく笑いものになるだろう。 投資家はピザなんかに興味はない。バイオテック、リチウム電池関連株の話を聞きたいのだ。 そしてそうした銘柄と命運をともにする。 ・参考文献 (1)Burton Malkiel, A Random Walk Down Wall Street: The Time-Tested Strategy for Successful Investing, W. W. Norton, 2009, p.264.(『ウォール街のランダム・ウォーカー──株式投資の不滅の真理』バートン・マルキール著、井手正介訳、日経BP 日本経済新聞出版、2023年) (2)ウォーレン・バフェット、バークシャー・ハサウェイの株主への手紙、2008年版、P16。 ※本稿は、『年1時間で億になる投資の正解』(新潮社)の一部を再編集したものです。
ニコラ・ベルベ,土方奈美