「有望だと思う会社を選んで投資」することの難しさを金融ジャーナリストが解説。コロナ禍での投資、ワクチンを開発したファイザーよりも、リターンの大きかった会社は…
金融庁が公表した「NISA口座の利用状況調査」によると、2024年6月末時点のNISA口座数は2427万6789口座で、2024年3月末から約105万口座増加しました。そのようななか、記者や金融ジャーナリストとして活動する、カナダ出身のニコラ・ベルベさんは「投資にリスクはつきもの。だが、投資しないのはもっとリスクだ」と語っています。そこで今回は、ニコラさんのベストセラー『年1時間で億になる投資の正解』から、一部を抜粋してご紹介します。 【書影】各賞受賞の実力派経済記者が“ほったらかし投資”の極意を示す。ニコラ・ベルベ、翻訳:土方奈美『年1時間で億になる投資の正解』 * * * * * * * ◆レアな真珠の神話 周囲の誰かを適当にとっつかまえて株式投資の方法を尋ねたら、こんな答えが返ってくるだろう。 「そうだな、一番有望だと思う会社を選んで株を買い、あとはその会社が次のアップルやグーグルになるよう祈ればいいんじゃない?」 僕はこの考え方を「レアな真珠の神話」と呼んでいる。 この神話によると、投資家はみな水晶玉を持っていて、未来を読むスキルを持ち合わせた者は宝石を見つけられる。一方、未来を読めない者は失敗し、そのツケを払いながら生きなければならない。 みなさんの周りにもこの神話に騙された人がいるかもしれない。あなた自身がその一人かもしれない。 たとえば未来の可能性に賭けるというのはどうだろう。 今後数年にわたって世界を席巻するようなイノベーションを選び、その恩恵を享受するのに最適な位置につけている企業の株を買うのだ。小さなバイオテック企業、人工知能(AI)の企業、あるいは電気自動車の急成長にともなって需要が急拡大しているリチウム電池メーカーはどうか。 この投資方法の問題は、実績が惨憺(さんたん)たるものであることだ。未来の世界を変えるような発明を今日知ることができたとしても、その情報を使って金持ちになるのは難しい。
◆自動車メーカーへの投資 史上最も重要な発明の一つ、自動車の例で説明しよう。 20世紀初頭に自動車メーカーに投資した人々は、おそらく自分には未来が見えていると思ったはずだ。実際そのとおりで、今では14億台以上の自動車が世界の道路を走っている。 とはいえ自動車メーカーへの投資の多くは大失敗に終わった。アメリカでは20世紀に入って以降、2900社以上の自動車会社が登場したが、そのほとんどが消滅した。同業者に飲み込まれたケースもあるが、事業を支える収入が得られずに倒産したケースのほうが多い。 20世紀が終わる時点で、アメリカの自動車メーカーとして生き残っていたのはわずか3社だ(そのうちGMとクライスラーの2社は2007~08年の経済危機の際、連邦政府の救済を受けてなんとか倒産を免れた)。 自動車に続いて、飛行機が数十億人の仕事や旅行のあり方に革命を起こした。航空業界の競争も激しく利益はほとんど出なかったため、投資家が望んだ結果を得られることはまれだった。