高額も納得の特殊素材でソーラー文字盤表現の限界を突破したカシオウオッチ50周年記念限定「オシアナス マンタ」開発秘話
佐藤さん:ガリウムタフソーラーはもともと宇宙産業で使われるもので本当に世界の最先端、最高峰の技術。発電効率や受信感度のこともありますが、それを腕時計に使えること自体が私たちにとっても夢が広がる話でした。これまではソーラーセルの存在を感じさせないことに専念して結果を出してきましたが、今回のガリウムタフソーラーは漆黒で見た目にも映えるので、あえて露出させる新しいデザインを考えよう、という発想ができたのです。 黒羽さん:モジュール開発とデザインが、ソーラーセルを主軸に連携して時計を作るプロセスは異例中の異例ですね。ソーラーを見せたり、カレンダーディスクにグラデーションの蒸着をかけたりというのはパーツの設計にも関わってくるので、デザインチームとは本当に数え切れないぐらい打ち合わせを重ねながら開発を進めました。 佐藤さん:その甲斐あって、ソーラーの時計では考えられなかったような立体感のある文字盤ができたと思います。この文字盤は真鍮製で、これにメッキを施したあとに一度ブルーIPを入れてからブラックに塗装し、塗膜ラップを入れているのです。ですからパッと見はブラックですが、強い光を受けるとブルーIPの効果で少し青みがかって見えるんですよね。これはデザイナーのアイデアで、下地の色によって黒の見え方が変わるタキシードのような効果を狙ったもの。コレクション横断の「zero to one」のテーマカラーはブラックとゴールドですが、それを守りながらオシアナスらしいブルーの表現も成立できたと思います。
–先ほど少し話に出ましたが、従来のインダイアルソーラーの時計は金属文字盤ではないのですか? インダイアルだけでソーラー発電が行えるわけですよね? 黒羽さん:確かに発電はできるのですが、金属文字盤だと電波と干渉してしまい受信が困難になります。OCW-SG1000ZEでは電波受信用アンテナの真上に配置されたカレンダーディスクが肉抜きされているので、その隙間を活用して受信をしています。 佐藤さん:インダイアルソーラーの文字盤はポリカーボネイト製で、樹脂できた不透過のミラー材を裏に合わせることで受信感度を維持しながら深みのある黒が実現できました。金属文字盤だと思われていたのであれば、頑張って開発した甲斐がありましたね(笑)。 –OCW-SG1000ZEのサファイアベゼルはOCW-S6000にも使われているものと同じですか? 佐藤さん:実はOCW-SG1000ZEは若干厚く、径も大きくなっています。今までで一番贅沢にサファイアクリスタルを使っていますね。ファセットカットを施した48面体のサファイアは基本的には黒に見えつつ、光を受けると青く偏光するようなブラック蒸着を狙って入れました。内側側面にも青のスパッタリングを施すことで、横から見ても透明に見えないよう工夫しています。