味噌煮込みうどん、3つの誤解を解く!~大竹敏之の「シン・名古屋めし」
寒い季節になると恋しくなるぐつぐつ熱々の味噌煮込みうどん。外食でも内食でも食べる機会が多く、名古屋めしで最も食べられている料理といっても過言ではありません。 そんなド定番の味噌煮込みうどんですが、実は意外と誤解も多い一品でもあります。ここではそれをひとつひとつ解いていき、皆さんがいつも食べている味噌煮込みうどんをより正しく知ってもらいたいと思います。
誤解 その1 ~ 麺が太くて硬い
味噌煮込みうどんの一番の特徴は麺。その太さや硬さに、初めて食べた県外の人が「生煮えじゃないか!?」とびっくりするのは、よく知られた"名古屋めしあるある"です。 事実、味噌煮込みうどんの代表格、「山本屋本店」「山本屋総本家」の麺が太くて硬いことは確か。ですから「味噌煮込みうどんの麺=太くて硬い」は誤解とは言い切れないのですが、太くて硬くなければならない、というわけではありません。 例えば明治23年創業の「一八本店」(名古屋市中区)はややねじれのある平打ち麺。大正15年創業の「みそ煮込のかどまる」(名古屋市東区)は普通のうどんの半分程度の細麺です。「一八本店」4代目店主・上田正隆さんは「太くて硬い煮込み麺は山本屋さんが流行らせたもの。私らは"特徴を出そうと変わった麺を打ってらっしゃるんだな"と思ったもんです」といいます。味噌煮込みうどんが揺るぎない名古屋名物となったのは、クーラーが普及して夏でも食べやすくなった昭和40年代以降。市内の店の多くが山本屋にならって"太くて硬い"麺を取り入れるようになったのもそれ以降と考えられます。歴史のある店ほどそのブームの影響を受けず、"太くて硬くない"味噌煮込みうどんを食べられるのです。
誤解 その2 ~ 味噌煮込みって味噌味の鍋焼きうどんでしょ
味噌煮込みうどんの麺が一般的なうどんの麺とはまったく別物だとご存じでしょうか?そうとは知らず、見た目がよく似た鍋焼きうどんの味噌仕立て、と勘違いしていないでしょうか? 普通のうどんは塩水で小麦粉をねって麺を打ちます。これを釜でゆで、ざるにあけて丼に移します。対して味噌煮込みうどんの麺は真水で生地をつくります。釜でゆでる工程がなく、土鍋に麺を直接放り込んでぐつぐつと煮込みます。これは古い家庭料理のすいとん(小麦粉でねった生地をちぎって鍋で煮る料理)がルーツだからともされ(山梨県のほうとうも同様)、煮込むうちにつゆが麺にしみ込んで、麺を噛むごとにつゆの味わいが感じられる特徴にもつながっています。土鍋で今まさに煮込まれながら目の前に出されるのは、塩を使わない煮込み専用麺だからこそ。鍋焼きうどんとは異なる、名古屋オリジナルの麺料理なのです。