仲間同士でつくった農業共同体が、身近な人から幸せにする「味噌づくり」とは
「かかわるみんなの幸せのために作る」をどう未来にのこしていくか
「裏山で飼育する家畜の排せつ物を堆肥として農業に活かし、収穫した作物の一部を家畜の飼料にする。味噌づくりをはじめた当初は、有機というより、どちらかというと循環型農業が地域の主流でした。それをベースに、20年ほど前から、有機農業というスタイルが加速したように思います。とはいえ、山の中の田んぼだけだと規模が小さく経済的に持続が難しかったことから、現在は平地の田んぼも所有しています。その思いをどう伝えていくか。経営を持続させるために、有機大豆を使った味噌をもっと高値でネット販売したり、都内のレストランに卸したり、などの選択肢もたくさんあります。けれどそれ以上に、僕たちは“手づくり”にこだわりたい。人と人とのコミュニケーションを大切にしたい。自分たちらしいやり方で、面白く、『やさかみそ』のすばらしさを伝えていけたら。当然ながら、僕らが伝えることをやめてしまったら『やさかみそ』はなくなってしまう。そんな危機感を持ちながら、伝え続けるしかない、そう思っています」 “伝える手段”として、手作り味噌セットの販売以外に力を入れているのが、子どもたちへの食育だ。 「たとえば、(速醸法など)短期間でつくられた味噌ではなく、僕らの味噌を食べてもらえる保育園や学校を増やす活動をしたり、中学校で講演をすることもあります。講演では、『将来どんな働きかたをしたいか』というテーマで話をするのですが、農業の話題なんて退屈だし、ほとんどの人が興味を持たないというか、子どもたちにとって、農業は職業じゃない。おじいちゃん、おばあちゃんがやっていること、みたいな感覚だと思うんです。なのでどちらかというと農業という働きかたよりも、国内の自給率をはじめ、昔は食料を求めて国同士が争ったりしたことなど、食糧危機について話すことが多いです。二、三人の生徒は、『将来農業がしたい!』と手を挙げてくれることもあって、それはうれしいです。ただ、現実として弊社を志願する人は、まだまだ少ないですね」