「妥協しませんでした」競泳・池江璃花子選手の母親が語る、身体を作る大切な時期に食べさせたい「まごわやさしい」食材とは?
母乳は大切な栄養素
0~3歳は、脳の発達にとって最も大事な時期です。母乳にはそのベースを作る大切な栄養素がいっぱい入っているのです。 厚生労働省が行った平成27年度の調査によると、妊娠中に、「ぜひ母乳で育てたいと思った」「母乳が出れば母乳で育てたいと思った」と回答したお母さんは、9割を超えています。 しかし、生後3カ月時点で母乳だけで育てている割合は54.7パーセント。ミルクへの依存が一面であるのも事実です。 今は生まれてすぐからミルクを与える病院も多いため、母乳育児の方法を教えてもらえない、やり方がわからない、と思っているお母さんが多いかもしれません。 いろいろな事情があってミルクに頼らざるをえないお母さんも多いかもしれませんが、母乳育児のよさを、一人でも多くのお母さんにお伝えしていきたいと思います。
食べ物は「まごわやさしい」を
出産でお世話になった片桐助産院(現在は閉院)の片桐弘子先生は、自然の力をとても大切にされていました。添加物や人工甘味料などが入った食べ物は避け、旬の野菜を中心にした日本の伝統食を奨めてくれました。 それまでの私は、まったく無頓着な食生活を送っていました。でも、片桐先生のおかげで母子にとって食生活がどれほど大事であるかを知り、母乳育児ができる健康的で正しい食のあり方を学ぶことができました。 妊娠中の母子にとってよい食べ物とは、出産後の母親にとってもよい食べ物であるだけでなく、その後もずっと続ければ健康に暮らしていける食べ物でもあります。もちろん、乳離れしたあとの子どもにとってもです。 ですから、私は子どもたちのために、特別な離乳食を作った覚えはありません。私が普段食べているものを薄めたりやわらかくしたりしてそのまま食べさせていました。 意識していたのは、「離乳食を早く始めないこと」です。完全母乳で育てていれば、8カ月くらいまで母乳だけでも平気です。「○カ月までに始めなければならない」とか、「特別な離乳食を作らなければ(買わなければ)ならない」とか、私はそういうことにこだわる必要はないと思います。 食材で気をつけていたのは、次の点です。 ●なるべく農薬や化学肥料、食品添加物を使っていない自然に近い形の食べ物を与える ●できるだけ近くで栽培された食べ物を与える 「ご馳走」という言葉は、心を込めてもてなすことで、とくに食事を振る舞うという意味で使われます。これは、おいしいものを走り回って集めたことが由来とされています。つまり、走り回って集められる範囲の、近くで採れた食べ物です。 「身土不二(しんどふじ)」という言葉もあります。その土地で採れる食べ物が、その土地にいる人に必要な栄養である、という考え方です。 また、遠くから運んでくるものは、それだけ食べるまでに時間がかかりますから、鮮度を保ったり、腐ったりしないようにするために、さまざまな化学的処理を施さなければなりません。 ●季節に採れる食べ物を与える 大まかにいって、冬に採れる作物(白菜、レンコン、根菜類など)は身体を温め、夏に収穫される作物(トマト、キュウリ、ナスなど)は身体を冷やします。寒い冬に、身体を冷やす夏野菜などは食べさせないようにしてきました。 ●外国産のものはなるべく避ける 移動距離が長いため、その間のかび・腐蝕・発芽を防ぐために農薬(ポストハーベスト)をかけられることが多いので。 ●精製された白い食べ物(砂糖、白米、白い小麦粉で作られたパンやうどん)は、なるべく避ける 白く精製するということは、その分の栄養が削がれているということです。たとえば白米は、まわりの胚芽を落としていますが、じつはその胚芽にビタミンやミネラルが含まれているのです。できれば玄米を食べるのが理想ですが、「玄米はちょっと食べにくい……」という方も、100パーセント精米した白米ではなく、胚芽を残した胚芽米を食べるとよいと思います。 食育の世界に「まごわやさしい」という言葉があります。これは、「こんな食材を食べたらよい」というものの頭文字を取ったものです。 〈ま〉まめ。豆腐、みそ、そら豆など 〈ご〉ごま。クルミやアーモンドなどの種実類も含む 〈わ〉わかめ。海苔、ひじき、昆布など 〈や〉やさい。とくに緑黄色野菜 〈さ〉さかな。とくに小魚や、イワシ、サバといった青魚 〈し〉しいたけ。えのき、しめじなどのキノコ類も含む 〈い〉いも。サツマイモ、サトイモ、こんにゃくなど 「まごわやさしい」は、野菜以外は黒や茶色など地味な色のものが多いです。子どもに持たせたお弁当も、そんな色ばかりでした。子どもたちにとっては、あまりうれしくないお弁当だったかもしれませんが、身体を作る大切な時期です。妥協はしませんでした。 日本の伝統食には、「まごわやさしい」を使った料理が多いと思います。自分と家族の健康のために、お子さんの健やかな成長のために、取り入れてみてください。 文/池江美由紀 サムネイル/写真:Insidefoto/アフロ
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