「赤字額日本一の第三セクター鉄道」が激変…!いま全国のローカル鉄道関係者が「京都丹後鉄道」に注目している「納得の理由」
何が“上”で“下”?「ちょっと変わった上下分離」
さいきん、ローカル鉄道のニュースで「上下分離」というキーワードを良く聞くようになった。これまで資産の保有・運行などを全て担っていた鉄道会社から、“下”(線路や施設)の負担を取り除く(自治体負担など)ことで、赤字に苦しむ鉄道会社の税金負担などを減らし、採算分岐点をグッと下げる仕組みだ。 【写真】いま世界で話題…!日本発の「新しい乗りもの」はこれだ! もともと高速道路や空港ではこういったケースが多く、ヨーロッパ(EU圏)ではフランス・スイスなどで「鉄道は上下分離」が当たり前となっている。 しかし、負担を減少させた以上のペースで鉄道の衰退が進むケースもあり、利用者の維持や観光誘致など、税金投入に値する鉄道の価値向上を必要とされる。経営不振からの再生を目指すローカル鉄道の関係者が、ヒントを得るべく訪れるのが、日本海に面した京都府・丹後地方や兵庫県北部を走る「京都丹後鉄道」だ。 かつて「赤字額日本一の第三セクター鉄道」であったこの会社(当時は「北近畿タンゴ鉄道」)は、2015(平成27)年4月に上下分離の導入に踏み切った。ただしこの場合は、自治体が実質的に“下”を担うだけでなく、“上”(列車の運行)を、高速バス会社「WILLER EXPRESS」グループの「WILLER TRAINS」が担うという、全国的にも例がないタイプの上下分離を採用したのだ なぜ、こういった変則的な上下分離がとられるようになったのか。京都丹後鉄道の運行を担うWILLER TRAINS株式会社・飯島徹代表に取材しつつ、その経緯を探っていく。
“お役所経営”で沈みゆく鉄道
京都丹後鉄道の前身となる「北近畿タンゴ鉄道」の 総延長は、114km(首都圏なら山手線3周分以上)にも及ぶ。1996(平成8)年には一部区間の電化・高速化による特急列車の乗り入れが始まり、大阪・京都から2時間内に到着する特急が名勝・天橋立の至近距離にある天橋立駅に乗り入れることに。都心からの観光客がシャワーのように各地に行き届き、鉄道としての効果を十二分に発揮してきた。 しかし北近畿タンゴ鉄道の利用者は、ピーク時(1993年)の年間303万人から、2013年には186万人まで減少する。利用水準としてはまだまだ多いものの、あまりにも長距離で経費もかさみやすく、2010年以降は年間赤字が7億~8億円という赤字に苦しむようになる。 しかし、沿線自治体が主導する第三セクター鉄道であるが故に民間の経営感覚を持ち得ず、何をするにしてもしがらみが付きまといがち。役所主導の「ただ赤字を埋めるだけ、対策を打てない・責任をとれない」といった閉塞した状況は、各地の第三セクター鉄道・地方鉄道で、たまに見かけるケースだ。 かといって114kmにも及ぶ鉄道のバス転換は同程度の赤字が想定され、民間から経営陣を招聘したところで会社がしがらみに囚われていては、呼ばれた方も打つ手がない。 ここで京都府や沿線自治体は、思い切って「鉄道の運行は民間に委託」「設備などは実質的に地元保有」という選択肢を打ち出し、公募にはバス会社や鉄道コンサルタント、そしてWILLER陣営を含む4社(鉄道事業者の応募はなし)が応じた。 これまでツアーバス・高速バス運行で成長してきたWILLER陣営に鉄道経営の経験はなかったものの、当時を知る飯島代表によると、各地で行われた説明会での「協力して鉄道を立て直してほしい!」という熱量をひしひしと感じたという。 もともと旅行業者でもあったWILLERの強みは、簡単にいうと「快適な移動を提供し、人を集める」こと。鉄道を経営する勝算は十分にあったといい、最終的にWILLER陣営が受託に至った。
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